週刊キンダイ vol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~

2025/05/14(水)12:02
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キンダイ

3年前の未来予想図が現実になった?!

大学の新学科として「編集工学科」が新設。
千夜千冊は2000夜間近、千夜千冊エディションは35冊目が発売。

EdistNightなう〜3年後、イシスは何を?(2022/02/25)

 

 イシス編集学校55[守]開講日の5月12日、近畿大学の東大阪キャンパス(ACT-116)にて稽古Dayが開かれた。入門したばかりの近大生が会場に11名、Zoomに6名が集まった。「大学では色んなことを試してみたい」「サービスデザインや、企画の仕事に興味がある」「編集に興味がある」など近大生は編集工学への熱い動機をもっている。

 東京から新幹線で駆けつけた学林局の衣笠純子はのっけから「思考をひらき、普通の人とちがうところまで行ってほしい」とにっこりした。

 

最初のお題は自己紹介から。

1.学部 

2.名前

3.誰にもいったことがないこと

 

 衣笠は続ける。「秘密をいうことだけではないんです。私は今日、モスバーガーを食べたんですけど、これ誰にもいってません。今はじめていったんです」と、あえていうほどのことでもないランチメニューだって意図をもって思い出せば自己紹介のネタになることをほのめかす。私たちは、当たり前すぎて無意識になっていることが多すぎるのだ。

 

近畿大学 東大阪キャンパスとZoomでハイブリッドの開催

 

 どんなこともネタになる。それを知った近大生はとまらない。「ちょっとニンニク臭いかも」「母親から一万円踏み倒してます!」「実は小説を書いてるんです」「チーズケーキワンホールたべちゃいました」と、×匂い、×秘密、×特技、×食欲といった独自の見方をもちはじめた。「オンラインなのでズボンははいてません!」「パンが全部上顎について絶望的だった」と笑いをさそいつつ明かす人もいれば「ニンニクといえばペペロンチーノを食べて今、おなか壊しています」「7倍ペヤングでニンニクの匂いが一週間くらい残ってます」とニンニクシリーズに、×体調、×時間など、ネタにネタを重ねた。はじめて出会った人たちの自己紹介はつながりながら一つの物語になっていくようだった。

 

ネタにネタを重ねた自己紹介

 

 「情報の収集ってほんっっとに大事!いかに集めるかです!」と衣笠はつづけ、ほぐれてきた近大生をさっと情報編集の入口に立たせる。【編集稽古001番:コップは何に使える?】も一緒に行った。「コップは飲み物をいれる容器」から器つながりで楽器、凶器へ。そしてコップを置く場所なら?中に入れるものは?などを取り出して使い道は多様に広がり、あっという間に参加者全員が001番を回答した。近大番である南田桂吾が近大生の先輩として一言おいた。「回答をするだけではなく、振り返りをかくこと。楽しかった、できた。そういったことではなく、むしろどこで詰ったかも言葉にしておくといいです」稽古を謎解きゲームで終わらせるのではなく、むしろできないところに意識的になることで日常の気にしてもいなかったことが見えてくる。そうして身体に型をしみこませてこその稽古なのだ。

 

あっという間に全員が001番を回答!

 

 編集学校では”編集工学”を学ぶ。工学とは「自然科学を母体として、人類に役立つ技術を研究・開発する応用科学である。(ブリタニカ国際大百科事典)」というのだから、これから新時代を担う学生が編集工学に取り組む学科があることはとても自然なことのように思える。

 3年前にエディストで予想した未来予想図はまだ現実にはなっていないが、近畿大学の東大阪キャンパスで行われた稽古Dayを編集工学科1時限目がスタートしたと見立ててもおかしくないように思えた。

 自己紹介として使った「誰にもいってないこと」は、この後の稽古でさっそく使う「ないものフィルター」という型である。すでに次の回答が待ち遠しい。

 

アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)

文/一倉広美(55[守]師範)

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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
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作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。