何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

「ポケットに入っているこの玩具は、6歳の私がコンビニで万引きしたものです」
北川周哉がポケットを入り口にして世界を語ってみせたのは、今から3期を遡る51[破]のときだった。当時学衆だった北川はその後も編集道をまっすぐに駆け、今期55[破]では北川師範代として夕刊ちぐはぐ教室を受け持った。そこに機を図ったかのように、P-1グランプリが復活する。奇しくもというべきか、案の定というべきか、北川師範代の教室からP-1プレゼンターを輩出することになった。
学衆は、教室をトップ回答で率いていた佐藤玄さん。プランのために選んだ数寄三夜は、『クラブとサロン』『コミュニティ』『忘れられた日本人』だった。現代に失われつつある公共や共同体を取り戻したい。そう考えた佐藤は当初「趣味」をテーマにプランを構想するが、もっと具体性を持たせるべしとの指南を受けて「公園」、その中でも「ぶらんこ」に目をつけた。
公園には、よく子供と遊びに行くという。そこにはもともと知り合いでもない大人や子供が集まっている。まさしく公共であり、共同体の場所だ。ぶらんこは公園の中でも、特に人気の遊具らしい。子供たちは順番にぶらんこに乗りこんでゆく。ぶらんこを漕ぐと、吊り下げられた板に乗った体が前後にゆれる。スピードをあげると肌は風を切って、視界はぐわんぐわんとスイングする。ぶらんこには将棋ともサッカーともおままごととも違う、身体的に純粋な享楽がある。
佐藤の調査はつぎつぎと、歴史に埋もれたぶらんこの秘密を明らかにする。ぶらんこはもともと遊具ではなかった。古代では悪魔祓いの儀式に使われていたり、近代では精神病の治療にも使われていた。フラゴナールは「ぶらんこ」という絵画を描いたが、そこには無邪気と欲望が絡み合っていた。佐藤の探求はアーキタイプを掘り下げ、催眠術師の振り子や地球の自転現象を示すフーコーの振り子といった大小宇宙にまで広がっていった。ぶらんこから宇宙が見えた。
「パパ、ブランコが壊れるくらい押して。宇宙に届くくらい押して」
実際に、佐藤が子供に言われた言葉である。なぜ人はぶらんこに乗って宇宙を感じるのか。ぶらんこは文明や宗教や精神にどのように関与してきたのか。ぶらんこに乗ることで、私たちは何を思いだすのか。P-1の場で、古代からぶらんこに託されてきた宇宙感覚が明かされる。
●イシス編集学校 第88・89回感門之盟「遊撃ブックウェア」
★54[破]、43[花]の方はこちら
■日時:2025年9月6日(土)12:30-19:30(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年8月29日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom88
★55[守]の方はこちら
■日時:2025年9月20日(土)13:00-19:00(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年9月12日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom89
桂大介
編集的先達:ジル・ドゥルーズ。お酒は中2から、仕事は高1から。今では複数社を経営する編集的起業家。リラックスは、甘だるい香りに包まれるシーシャの耽美な一時。ファッションとお酒をこよなく愛する。
【特集】ETS群島リレー06@広島 瀬戸内海の青とカープの赤
「蒼い風かおる街広島、赤い自転車で飛ぶ」。エディットツアーの参加者が広島の魅力を綴ったコピーだ。瀬戸内海の青とカープの赤が対照的に映えて、たったの18字に広島らしさがギュギュッと凝縮されている。 8月1 […]
コメント
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2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。