何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

面白すぎる、グノーシスの千夜千冊の連打。最近、アマプラ(Amazon Prime)で無料公開されている坂元裕二の「大豆田とわ子と三人の元夫」、続けてみた同じく坂元の「カルテット」もハマったけれど、千夜のグノーシスも同じくらい好き。そうか、西洋にはこの「グノーシス 陰の精神史」があったからこそ、現代にいたるキリスト教を中心とする「光の精神史」を打ち立てることができたのかと腑に落ちた。
グノーシスの何が良いって「世界はいつしか出来そこないになったのではなく、出来そこないなものを『世界』と名付けたのである」というこの見方。だからこそ、「グノーシスは、世界が不完全なのだから完全な理念世界をめざそうとか、地上に神学大全をつくっていこうというプラトン的世界観やキリスト教的世界観に、大胆な注文をつけた」。カッコいい。
けれどもそれよりなにより当夜の『グノーシス 陰の精神史』で一番気になったのは校長の次の3つの予告だ。校長へのおねだり吹き出し付きでご案内(イタリックは引用)。名付けて、おねだりグノーシス。
Ⅰ フラジャイル・グノーシス
『フラジャイル』は25年前の1995年の執筆で、ぼくの思想のかなり大事な視線を束ねて既存のまことしやかな普遍主義に反撃を試みたものであったけれど、神秘主義からのヒントは入れなかった。だから『フラジャイル』にはディオニュソスやデミウルゴスをめぐる矛盾の物語が登場していない。
けれどももっと根底から普遍主義に対して反撃するなら、ゾロアスター教や一部の仏教や、ヘルメス知やマニ教やカバラやなどの、グノーシス知がいくらでも入ってきてよかったはずだった。そうしていたとしたら、ぼくは「フラジャイル・グノーシス」ともいうべき領域を開拓していたことになる。
Ⅱ タルコフスキーとグノーシス、グノーシス・フェミニズム?
本書は2冊組の1冊である。岩波が荒井献・大貫隆の編集的監修で『ナグ・ハマディ文書』全4冊を刊行したことを背景に、グノーシス思想史ガイダンスとして刊行された。たいへんユニークな2冊だった。
このあとざっと紹介するように、上巻にあたる『グノーシス 陰の思想史』では、古代グノーシス主義の先駆例(ゾロアスター教、ユダヤ教神秘主義、キリスト教グノーシス、マニ教)からルネサンス・バロックあたりまでのグノーシス思潮(パラケルスス、ヤコブ・ベーメ、薔薇十字、フリーメイスンなど)を俯瞰している。
もう1冊の下巻は『グノーシス 異端と近代』となっていて、中世以降の神秘主義やイスラム・グノーシスなどとともに、芸術が引き取ったグノーシス(ゲーテ、ブレイク、ヘッセ、ユゴー)、哲学や心理学が言及したグノーシス(シェリング、バーダー、ハイデガー、ユング、ラカン)、および20世紀文化の中のグノーシス(シュルレアリスム、シュタイナー、シャガール、タルコフスキー、フェミニズム)を摘まんでいる。…できれば下巻もいずれ紹介したい。
Ⅲ マンディアルグが自分が最も信頼している思想家・ルネ・ゲノン
ゲノンについてはあらためて千夜千冊しようと思っているのだが、1910年に「ラ・グノーズ(グノーシス)」という雑誌を創刊したことをここでは紹介しておく。ぼくはピエール・ド・マンディアルグの家を訪れたとき、マンディアルグが自分が最も信頼している思想家はルネ・ゲノンだと何度も言っていたのに驚いたものだ。
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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コメント
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2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
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作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
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2025-09-24
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