何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

坂本龍一さんの訃報に悲しみが広がる1週間となった。生前好んだ言葉として、古代ギリシアの医学者ヒポクラテスの『箴言』の一節とされる「Ars longa, vita brevis(芸術は長く、人生は短し)」が紹介され、ネット上でもあちらこちらでシェアされている。イシス編集学校で「ars(アルス)」といえば「Ars Combinatoria(アルス・コンビナトリア)」や近江ARSをイメージする面々も多いだろう。ラテン語「ars(アルス)」の語源には「術」や「方法」の意味がある。イシスにとってアルスとは方法である。
週末開かれた伝習座は、指導陣が集って学衆に示すべき指南の方法をめぐる場である。終日、熱気あふれる方法の交わし合いが続いた。第51期[守]基本コースをうけもつ新師範代には「教室名フライヤー発表」の舞台が与えられた。イシス編集学校の教室名はすべて校長松岡正剛による命名だ。2000年の開校以来生まれた教室名はまもなく1000を越えるが、校長は「すでに名付けた言葉は使わない」という縛りをかけ、ひとりひとりの師範代にあわせて言葉を選りすぐってきた。どれもが風変りで、遊び心があって、唯一無二の贈り物。そんな教室名に肖りつつ、師範代はA4サイズ1枚のメディアにイシスの魅力をあらわしていく。教室名フライヤーとは、これまで培ってきた編集の方法をまだイシスを知らない人々に向けて解き放つ編集実践の第一歩なのである。
発表を終えて安堵する師範代に鋭いディレクションが飛ぶ。ディレクションのとりを務めたのは編集工学研究所の若きデザイナー穂積晴明だ。松岡校長はデザインについてふだんどのような点に注目し、注文をつけるのか。穂積は自身が校長から常々言われてきたこととして3つを挙げた。
1.主張がない
どうしてもこれを伝えたいんだというメッセージが入っているか。自分の欲望だけではだめで、感情が乗りすぎると自分の主張を邪魔することがある。
2.気配がない
よくやってしまいがちなのがさまざまなモチーフを並べること。だがそれだけだと説明的になる。気配や余白や暗示性が薄れていってしまう。
3.見立てがない
見立てはたった一つのオブジェに託していく方法。それひとつでどこまでいけるか、語れるか、魅せられるかを試すこと。
「これまで僕自身がさんざん言われてきたことです」と校長の言葉を新師範代に手渡す穂積
イシスで編集を学ぶ者は、既知のモデルに肖ることで未知へ飛べることを知っている。師範代の多くはプロのグラフィックデザイナーではないが、先行するデザインに肖ればデザインはできるのだ。ただし、肖るモデルは必ず圧倒的な中身があるものに限る。その筆頭は松岡校長が手掛けてきた出版物をはじめとしたメディアだ。だからこそ、デザインのプロではない師範代に校長直伝のディレクション、松岡正剛の方法が手渡される。
Ars longa――「方法」こそが長く続いていくのである。
教室名フライヤー発表のコーナーが終わった後、穂積デザイナーを直撃してフォントについての考えを訊いた。穂積が編集工学研究所林頭の吉村とともに千夜千冊を追いかけて愉快なトークを繰り広げるショートラジオ「おっかけ!千夜千冊ファンクラブ」通称オツ千で、校長にはじめて褒められたデザインは文字だと話していたことがある。千夜千冊のトップ画像や感門之盟のタブロイド紙など穂積が手がけたデザインを見ると、異なる種類のフォントがさまざまに組み合わされているがどんな意図があるのか。
「フォントは声色」
迷いなく答えが返ってきた。明朝ならたおやかな声、ゴシックなら野太い声など、文字から聴こえる声をイメージしているという。「どんな声優をあてがうかを考えています」穂積の見立ては明快だった。穂積のデザイン秘話を聞きたいなら、こちらのオツ千もオススメだ。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
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2025-10-02
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