恋する朝顔◎53[守]卒門式師範代スピーチ【84感門】

2024/09/22(日)17:53
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■学衆に恋する

 

 「“恋する”は清水師範代の方法ですね」

 

 感門之盟の壇上で、阿久津健師範から言祝がれ、続いて挨拶すべくマイクを受け取った。向き直ったらQQRQ(救急利休教室)の学衆とそのご家族と目が合った。空いている椅子には、参加が叶わなかった学衆が座っているように見えた。そうか、私はQQRQに恋していたんだ。

 「正解がないと言われて困りましたよね?」

 挨拶の冒頭で呼びかけると、学衆が大きく頷いた。

 

■学衆の方法を借りよう

 

 第84回感門之盟、卒門式の師範代スピーチに与えられた時間は1人1分。教室模様をなんとか要約して学衆と校長にお届けすることができた。ここに至るまでの道のりを振り返ってみた。

 

 回答を見るたびに、学衆の回答に向かう方法に惚れ惚れしてきた。部屋にあるものを擬人化してないものに変身させたり、アフリカの古着リメイク話をソクラテスやヘーゲルに重ね合わせたり。私もこんな風やってみたい。そうだ、学衆の方法を借りて、教室模様を要約してみよう。

 

■型を使ってリサーチする

 

 苦しい時の型頼みは、稽古中盤頃からにはQQRQ(救急利休教室)の得意技になっていた。ミメロギアで、ネーミング編集術で、型を当てて情報を動かしながら回答を探る動きがそこかしこに見られた。

 師範代も学衆さんの様子を型を通して読み返してみた。QQRQの《らしさ》はなんだろう?

 問いが多くて切実なこと、モノゴトのちょっとの違いをよく観察していること、多趣味で大切にしたいものがたくさんあること、お題の言い換えが上手いことが改めて見えてきた。

 

■知っているものに置き換える

 

 中でも上手いのは置き換えだ。かぶきっぽさは半沢直樹に、カラスの鳴き声はカカア(母)に、お城見学の待ち時間はスマホスキマ回答時間に置き換えられた。難しいお題がいつのまにか面白いお題にすり替わっていたのだ。

 さあ、師範代はなにをどう置き換えよう?

 そういえば、教室名フライヤーで、救急利休教室の世界観を利休好みの一閑人の蓋置に託したところ、校長が「極上の見立て」とコメントしてくれた。今回も、モノに託そう。QQRQは何っぽい?

 

開講前に師範代が作った救急利休教室のフライヤー

松岡校長直筆の教室名。ここから教室編集が始まった。

 


■自分の数寄を持ち込む

 

 ワンピース、筋トレ、ジャズ、漫画、SF、芝居、落語、よさこい、好な人…。QQRQ(救急利休教室)は好き≒数寄が溢れる教室だった。数寄を堂々と持ち込んだ回答が発する潔さとジューシーさに、何度圧倒されたことだろう。

 師範代の場合は、そもそも教室名=数寄だった。恋して世話する(≒救急)×お茶好き(≒利休)=師範代だ。利休と縁があって、恋するようにお題に絡みつき、方法の花を咲かせるものは何? 朝顔しかないことに、ここで気づいた。

 こうして、学衆の稽古模様を朝顔に託した挨拶が花開いた。

 

正解がないと言われて困りましたよね?

みなさんは、お題をもっともっと知りたいと思って、恋するように、問いのつるをお題に巻きつけてくれましたね。

わからないことを、わかったことにしなくていい。そう気づいたころから、回答が俄然イキイキしてきました。

自分が理解しやすい様にお題を読み替えたり、数寄なものと重ね合わせて考えたり、愚直に型を当てたり、問いのつるをきっかけに、方法の朝顔をたくさん咲かせてくれました。

利休といえば茶室の一輪の朝顔を際立たせるために、庭の朝顔を全て切り落としましたが、救急利休では教室中にお題に恋する朝顔が咲き乱れました。

これからも共に方法の朝顔を咲かせていきましょう。


■つるがのびる方法朝顔

 

ありとてもたのむべきかは世の中を知らするものは朝がほの花(和泉式部)

 阿久津師範からいただいた先達文庫は『和泉式部私抄』。和泉式部は朝しか咲くことのない朝顔に、恋の儚さを見た。

 

 

先達文庫には鈴木康代学匠からのメッセージが添えられる。  

 

 一方、QQRQ(救急利休教室)は、北極星に向かって伸びていく朝顔のつるに力強さを見た。

 

つるがのびる朝顔・光り続ける北極星(救急利休教室・Sさん)

 

 なんてカッコいいんだろう。QQRQは[破]でもそれぞれの世界でも、きっとどこへでも、どこまでもつるを伸ばし続ける、方法朝顔であり続けるのだろう。

 

 

 

松岡校長が名付け、師範代が用意した教室に、学衆の花が咲き乱れる。次は外の世界へ飛び出そう。

 

文/清水幸江(53[守]救急利休教室師範代)

アイキャッチ/後藤由加里

  • 清水幸江

    編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。