何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

用法3でコップに出会い直す?
聞いていた師範代たちは虚を突かれたはずだ。
12月1日(日)、第2回創守座が開催された。第1回番選ボードレールの締切の翌日。頭に多分に熱を残し、火照ったままの54[守]師範代が本楼で、ZOOMで、一堂に会した。番匠の渡辺恒久(アイキャッチ・左)と師範の阿久津健(アイキャッチ・右)は、お題語りで「あわせ・かさね・きそい・そろい」のインタースコアを起こすべく、用法3を重ねて語る。
用法3の前半を語るのはハワイからオンラインで参加した渡辺恒久だ。のっけからコップを登場させ、用法1の最初のお題と重ねた。赤ん坊がコップと出会いを3A(アフォーダンス、アナロジー、アブダクション)と照らし合わせていく。彼らは初対面の「もの」を舐めて、噛みついて、投げてみる。触知感覚を総動員し、自分が「もの」にどうアフォードされたかを確かめるのだ。次に、アナロジーの出番となる。感触を土台にし、似たものを見たことがないか、連想を働かせ、類似を探す。そこまでして、ようやく推論、アブダクションが起動し、コップの正体の探究に向かう。3Aは世界を解き明かす鍵ともなりうるのだ。
渡辺は019番から順にお題を3Aとつなげながら繙き、025番の「即答・ミメロギア」で締めくくった。ミメロギアとは松岡正剛校長が考案したエディトリアル・ゲームであり、連想力を膨らませて一対の言葉の対比を際立てる遊びだ。ミメロギアで重要なのはアナロジーだけではない。3Aはミメロギアでこそ輝く。渡辺は回答にどのような推論、アブダクションが働いているかを考えることで指南はぐっと楽しくなると師範代を鼓舞した。
▲師範、番匠はお題語りでは語り方にもインタースコアを起こしていく。渡辺は板書を駆使し、ZOOMでありながら動きのある講義を繰り広げた。
あとを受けて用法3後半を担当する阿久津は冒頭に田中優子学長の言葉を引用した。
編集にはその先への「たくらみ」がある
用法3はAnalogical Wayであり、Dynamic Wayだ。ミメロギアで言えば、2つの情報の関係を読み解くことを通して、読み手の世界の「見方」まで変えようとする。もちろん、話はそう単純ではない。マリー・アントワネットと蔦谷重三郎を並べ、整然と解説するだけでは足りない。真新しい見方を加え、あえて不足を作る。読み手の想像力をかき立てる不完全さこそが「たくらみ」であり、読み手を新しい世界に誘う。
もちろん、学衆ひとりでそこまで至ることは難しい。最初の読み手である師範代の存在意義はそこにある。渡辺の言葉で言えば、回答プロセスで働いたアブダクションが読み手から見て飛躍があるか。阿久津の語りでいえば、新しい見方を重ね、読み手の世界観を動かせているか。第2回番選ボードレールでは師範代と学衆の問感応答返が繰り返され、未知に向かう稽古が続く。
渡辺と阿久津の解説は類似しているが、全く同じではない。番匠、師範がかわるがわるお題を語るお題語りの面白さはそこにある。それぞれの見方を重ねることで「型」のプロフィールがさらにふくよかになっていくのだ。54[守]で学ぶ学衆も第1回番選ボードレールを経て、回答、指南の往還が生み出す創発を存分に体感してきたはずだ。ミメロギアでの番ボーもいよいよ中盤。54[守]が3A全開で「たくらみ」へと向かっていく。
文・写真/佐藤健太郎(54[守]師範)
写真/中村裕美(54[守]師範)
佐藤健太郎
編集的先達:エリック・ホッファー。キャリアコンサルタントかつ観光系専門学校の講師。文系だがザンビアで理科を教えた経歴の持ち主で、毎日カレーを食べたいという偏食家。堀田幸義師範とは名コンビと言われ、趣味のマラソンをテーマに編集ワークを開催した。通称は「サトケン」。
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コメント
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2025-10-02
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