【50破】埒をあける方法を手に! 祝・突破者76名

2023/08/16(水)08:09
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 12教室96名で開講した50[破]は、8月13日、76名の突破をもって終了した。突破率79%、近年まれに見る大勢の突破者誕生だ。最近では40[破]65名、47[破]60名以来の快挙である。猛暑日の最多記録がつづき、冷房していても暑いという声も聞こえるなか、学衆・師範代とも集中をきらさない稽古ぶりに編集にかける本気をみた。


 [破]では、文体、クロニクル、物語、プランニングと4つ編集術を学ぶ。最初に学ぶ文体編集術を土台として、さまざまな世界と対峙し、そのなかに新たな関係を見出し、自分の見方を仮説したり、メッセージしたりするのが[破]の稽古である。基礎となるのは文体編集術、松岡校長流の文章術だ。世に文章術、文章表現のハウツーは多いけれど、イシスの[破]は唯一無二の型を伝授する。実用的にも夢幻的にも使える方法が、シンプルなお題で学べる。こんなところはほかにないと自負している。

 

 先月(2023年7月)に刊行された『松岡正剛の国語力』には、こんなことがあかされている。

 国語力の獲得には「なり・ふり」を感じること、ZPDのように自己の発見よりもむしろ他者との出会いを実感すること、未知の領域で「埒をあける」ことが重要である。

 

 国語の「なり(成り)」とは言葉の由来のこと、「ふり(振り)」は言葉のふるまいのことだ。[破]の稽古でいえば、伝えたいメッセージにふさわしい言葉を選び抜くこと、言葉のつながりや対応関係に敏感になることといえるだろう。

 

 ZPDとは(Zone of Proximal Development)のことで、幼児の「発達の最近接領域」だ。幼児が何かを「わからない」から「わかる」ようになる、「できない」から「できる」になる。そのあいだにある「埒(zone)」である。幼児は発達段階的に知覚領域と認識を広げていって「自己」を獲得するのではなく、自分と他者、自分と世界にランダムに出会っていくなかで、あるとき一挙果敢に「自己」を確立するという説だ。

 

 [破]でいえば、非日常的な問い、興味のなかったモノゴトの歴史、なじみのない本や映画に、始めはよそよそしく出会う。だんだんとつきあっていくうちに、一挙に関係を結べる「ワカル」時がくる。未知の領域に「埒」をあけていけるように、お題と教室という仕組みがあるのだ。わたしたちは、子どもが自己を確立するように、いまからでも新たな国語力、実のところは「編集力」を獲得できる。

 

 どんな本であれどんな文章であれ、そこからはそれなりのZPDや埒を感じることができるはずで、とくに国語力においては「意味の街並み」や「意味の埒」が成立する範囲に気づくようになることが、かなり効果的なのだ。

『松岡正剛の国語力』(p254)

 

 [破]の稽古は、幼児が世界と自己を「ワカッタ」する方法にも似ている。師範代や師範が何度も言う「書きながらメッセージを発見する」「書いているうちに書きたかったことが見つかる」というのは、未知の領域で「埒」をあけるということだ。わからないながらもお題に向かい、外に情報をとりにゆき、コンパイルを重ねてみる。自分の言葉で言い換えて、自分なりにピンとくるたとえにしてみる。するといつか「これだったのか!」と埒があく。

 

 わかりきった世界から出たいけど、未知の世界のよそよそしさがこわいという人は多い。突破したみなさんは、4か月の稽古を経て、埒をあける方法を手にした。臆することなく憧れの未知の世界へ向かってもらいたい。

 

<追伸>
突破した学衆には松岡校長の『知の編集工学』が贈られる。実は来月増補版が刊行され、カバーも新しいデザインが準備されている。校長のポートレイトバージョンはレアアイテムになる。

 

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。