月傘は面影を回すー49[守]【79感門】

2022/09/22(木)19:06
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 一枚の巻物が解き開かれたその時、感門之盟会場の本楼がどよめいた。「イシスにあったらいいルル三条コーナー」でのことだ。その巻物におさめられていたのは、編集稽古の4か月間を詠んだ50のカルタの読み札である。A4用紙10枚を繋げることでやっと入れ込むことができた。唐傘さしていく教室の発表者の3名(学衆高田智英子、師範代大塚信子、師範阿曽祐子)では持ち切れず、進行役の49[守]番匠の石井梨香の手を借りずにはいられなかった。カメラの向こうから、Zoomチャット欄に「わ!長い!!笑笑」「うお、楽しそう」「50音全てとはすごいですね!!」という感嘆の文字に加えて、「スーハ―深呼吸で発表して!」「2日前の夜の推敲、お疲れさまでした!」「唐傘チームで応援しています」と仲間からの声援の文字が躍る。

 

 感門之盟のちょうど一週間前、稽古を慈しむ高田は「世代もバラバラ、数寄もバラバラ、フィールドもバラバラな編集の赤ちゃんの私達が、守の稽古という一点に集まり、編集を動かし始めた姿を記録したい」とルル三条案を放っていた。「アルバム」+「カルタ」を【一種合成】して、教室の名場面を5・7・5形式でカルタに仕立てたいというものだ。
 自ら考えたルル三条が感門之盟の発表に選抜されたという連絡が届き、高田は「自分に出来ることは全部やらせていただきます」と意気込んだものの、残された時間は多くはない。出来上がっている読み札はたった4音分。【ネーミング】もしっくりは来ていなかった。

 

 「まずはネーミング編集」と、高田は教室の【らしさ】を凝縮できないものかとアタマを回転させる。待宵月の光を眺めながら、「暗い夜道を歩くような編集稽古では、共読が道を照らす月のように助けてくれた」と勧学会で呟くと、仲間の編集魂に火が点いた。「『月暈』を連想しました。月の周りに傘のような光ができるのが、共読で輪が広がった感覚に繋がりました」。「唐傘の唐を入れて『唐留多』という案を放り込みます!」。満場一致で『月暈◎唐留多』という名前が誕生した。

 残るは50音にあてがう5・7・5だ。「あ」から「ん」までを並べると、まるでカルタ取りをするかのようにどんどん埋まっていく。「まだ埋まっていない”を”で始まる言葉を考えてみました」と勧学会に3カ月ぶりに登場する学衆がいれば、「英語も漢字もカタカナもひらがなも混ざって多色でしょ?」と誇らし気な声も。20時過ぎに「残業ひと段落しましたので、このまま私も参加します!」と一人駆けつければ、21時過ぎには「ようやく仕事の区切り。ただ、ただ、凄い!こちらは如何でしょうか。」とまた一人。日付が変わる頃、完成した50音を前にした面々は「金曜夜というヘトヘトな時間に、みんなで頑張れましたね」「ぎりぎりで出来上がり!もはや最高の幸せ」と労いあった。最後まで諦めない姿は、読み札の中にも刻まれた。

 

 唐傘さしていく勧学会には、150もの怒涛の発言スレッドが月暈のように広がり、今も輝き続けている。49[守]の稽古を仲間と共に辿りなおして創りあげる過程が見せてくれたのは、一人で見ていたよりも、ずっと深い広がりのある風景だった。唐傘衆はこれからも仲間を巻き込みながら編集を続けていく。

 

『月暈◎唐留多』十選

 

「い」 今しかない! 仮留めOK 先ず送信
「く」 悔しさも 粘った後味 ミメロギア

                  【025番:即答ミメロギア】
「こ」 紅茶でね 武将を分類 お数寄かな
                  【008番:豆腐で役者を分ける】
「そ」 底抜けに コップ広がり 宇宙旅行
                 【001番:コップは何に使える?】
「ね」 根回しと 休暇申請 土産もね

                                               【011番:ジャンケン三段跳び】
「の」 「の」で繋ぎ 「の」に惑わされ 「の」に関心
                 【009番:「の」の字の不思議】
「み」 見いつけた! 気配のカーソル クルクルと
「む」 無機質の 【地】を変え映える 電信柱
                【004番:「地と図」の運動会 】
「よ」 夜が明けて 目覚めの一発 おのぶ指南
「ん」 ンン~わかる! 皆で唸った 1お蔵
                  【015番:マンガのスコア】
              

                                        唐傘さしていく教室 唐傘十人衆

 

  

  初めて訪れた本楼にワクワクの高田智英子学衆(左)、カルタを巻物に仕立てた大塚信子師範代(右)

 

(文:師範代 大塚信子、師範 阿曽祐子、写真:林朝恵)

 

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  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。