何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

入伝式で事件は起きた。
「みなさんはまだ『守』です」
編集64技法を護符のように身にまとった林頭 吉村堅樹が言い放つ。本楼がざわついた。
それを聞いているのは、[破]を突破し、花伝道場の戸口に立った24名の入伝生。そして、彼らを師範代へと叩きあげるべく真剣を研ぐ15名の師範陣。吉村によれば、突破者も師範もどちらもが、守破離でいえば守のステータスだという。どういうことなのだろうか。
「守破離」とはもともと、江戸の茶人・川上不白が説いた芸道の成長プロセスのことである。不白はこう書いている。「弟子ハ守ヲ習尽」すれば「オノズト自身より破ル」。
吉村は問う。「[破]を終えて、なにか破れましたか」「ぼくは[守]の型をなにも使えていないということだけがわかりました」 自身の体験を無念そうに思い返していた。
イシスの[破]コースでは、世界を再表象することによって、これまで慣れ親しんでいた見方を破る。しかし、[守]を習い尽くすのとはわけが違うのだ。花目付 深谷もと佳も「[離]を出ても型がわからず、居残り稽古のつもりで花伝所に入った」と重ねた。
■守破離花、師範代までワンセット
イシスの[守]で学ぶのは、いわずもがな編集術の型である。その型を代行し、体現するのが編集学校の師範代だ。師範代としての稽古をしない限り、「編集道の守」をまっとうしたとは言えないのだ。
吉村は、赤チョークに持ち替え、黒板に書かれた守破離の文字をぐりぐりなぞる。
「編集道の守は、イシスの[守・破・離]と、師範代を終えるところまでです」
■先達の思いをのせた型を学ぶ
35[花]入伝式、冒頭挨拶で深谷は問いかけた。「私たちは、なぜ型を学ぶのでしょう」
吉村は「夢の共有のため」と応じた。型には先達の思いが載っている。型を継承することで、思いが共有できるからだ。1252夜『守破離の思想』にはこうある。「師弟相承のしくみのある稽古事は『夢の共有』をもたらす」
イシスというエディティング・ステートで、みながつねに編集状態であるためには、型とそれを継承する稽古が必要なのである。
「私も編集道の道中です」
吉村は入伝生と目線を同じくした。編集道の離は遠くに霞む。けれどたしかに、この花のむこうにあるはずだ。
写真:後藤由加里
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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2025-10-02
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