何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

物足りないZoom飲み会に愚痴りたくなったら、イシス編集学校をのぞくといい。オンラインのほうがおもしろい。そんな仕組みがここにある。20年前から「オンライン”でも”出来ること」ではなくて、「オンライン”でしか”出来ないこと」を考え続けるネットの学校。そのミームは、33[花]入伝生にも受け継がれていた。
入伝生のイニシエーションは、1分間自己紹介。震える手でマイクを握り、ペンを片手に待ち構える松岡校長のまえに立つ。『インタースコア』から選んだキーワードや、師範代として目指したい編集的世界観などを語るこのお題。要約力とともに、語りの力が問われる。
「じつに多彩だねえ」松岡校長は相好を崩した。33[花]入伝生に、大手電機メーカーから伝統工芸や林業関係者、現役大学生から外科医まで、さまざまなプロフィールをもつ面々が揃ったことだけではない。与えられた1分間に、25名がさまざまな演出をしてみせたからだ。身ひとつで本楼に乗りこむのとは違い、ホームからの参加できるプランニングがあった。
目立った演出技法を分類してみた。
「小道具派」「大道具派」「衣装派」の3つを紹介する。
●小道具派
手元にツールを引き寄せるダイナミックな演出。ヴァイオリンを構える、画用紙にくろぐろと書いた「衝動」の2文字を大写しにする、身に着けた多治見焼のイヤリングを例に引く、自身の著した本を見せる、など。自分らしさを「モノ」に象徴させる要約編集。
花伝師範や錬成師範の多くは、松岡校長に贈られた書や花伝扇をお守りのように画面中に飾っていた。
●大道具派
背景を調えておく、無言にして雄弁な演出。名前にちなんで月の切り絵を貼る、サッカーチームのユニフォームを吊るす、子どもの書いた絵を貼っておく、カメラの角度を変えて和室の欄間を見せる、など。仕事で手がけるという倉庫から参加した者もいた。入伝生の半数は、本棚をバックにしていたのが印象的。松岡校長も思わず立ち上がり、本棚チェック。
●衣装派
勝負服で挑む潔い演出。指導陣はこちらがメイン。袈裟姿の三津田花目付をはじめ、道場カラーにちなんで赤いラガーシャツをまとう岡本悟師範など。松岡校長も、校長講話に際して世界地図がプリントされたシャツに着替えた。入伝生のなかにも袈裟姿あり、いつもの背広に身を固め、放伝のあかつきには「引きちぎりたい」と決意表明する者もあり。
オンラインという与件を活かしたノンバーバル編集に、田中晶子所長、三津田知子花目付も目を細める。
「それぞれの背景がなにより雄弁に語りますね」
本楼で膝を突き合わせていたら知り得なかった地模様の数々。33[花]入伝生は、たくさんのわたしを引き連れて名乗りをあげた。
入伝生がこれから叩き込まれるのは、この「背景」を読みとる方法である。編集学校入門者は、もれなく指南に驚く。「どうして師範代は、そこまでわかるんですか」
回答という情報の欠片から、その人の思考のクセはもちろん、顔つきから暮らしぶりまで名探偵のごとく察知できるのが師範代。その秘密が花伝所で伝授されるのだ。
人は、バーチャル背景のなかに浮いているわけではない。Zoomにならぶ小窓から、地と図の関係をいざ学ばんとす湯気がたちのぼっていた。
(本楼撮影:後藤由加里)
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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