松岡校長が筆に託した願いとは 地域支所に書の授与【20周年感門】

2020/09/26(土)11:00
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「それはまるで、枕詞のような卒門式になると思います」
鈴木康代([守]学匠)は、20周年感門にて宣言した。
「いつかこのときを思い出すと、『あの場所に、あの人がいた』そう思えるはず」

 

ディスタンスこそが、互いのトポス性をあぶりだす。学衆は日本全土に散らばり、指導陣は数カ所の拠点に集まった感門之盟「Edit Japan 2020」。日本を編集するというテーマを体現するように、松岡校長は編集学校の4つの地域支所に書を贈った。2日目のオープニングで一斉にお披露目となった。

誇らしげに額を掲げる各地映像を見てみれば、書の顔つきはまったく異なっていた。

東北支所・未知奥連(みちのくれん)には、あおあおとしたケヤキ並木をスキップするような筆づかい。中部支所・曼名伽組(まんなかぐみ)が、反り返るシャチホコのように硬質でスタイリッシュな筆致なら、九州支所・九天玄氣組(きゅうてんげんきぐみ)は、西郷隆盛の眉を思わせるくろぐろとした生命力が満ちている。

 

そして、松岡校長の生まれ故郷・京都を擁する奇内花伝組(きないかでんぐみ)には、鴨川に揺れる柳のような、いちだんとたおやかで流麗な書が贈られた。松岡校長は、これらの書の制作にあたり、何パターンも書いては捨てたという。

 

 

 

 

 

東京・本楼で制作された書は、20周年感門前日、大阪・近畿大学ビブリオシアターに届けられた。

ダンボールとプチプチの十二単をそっと脱がせると、金色の額に収まったつややかな書が眠っていた。カメラマン木藤良沢は、その寝顔を見るなり、ビブリオシアター内でロケハンに繰り出した。探したのは、書が語りだす場所。

 

額が舞台を見つけると、墨字はぱちりと目を覚ます。金の墨汁が混ぜられた「感門」の二文字はきらっと笑う。重厚な書棚ではクラシカルに、白い螺旋階段ではモダンにと、その表情をくるくる変える。関西は、豊穣な歴史を土壌とし、色とりどりの文化が花開く土地。この書は、故きをたずね、ハイパーな将来へむかえという奇内花伝組へのしずかなる発破だった。

 

近畿をテーマにした1F NOAH 棚33にて

1F NOAHと2FDONDENをつなぐ螺旋階段にて

 

 

(制作風景撮影:後藤由加里、本楼にて)

(アイキャッチ写真出演:福田容子[左]、山根尚子[右])
(書撮影:木藤良沢、近畿大学ビブリオシアターにて)

  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。