【AIDA】EDISTicker 01 コケとすすきの室礼(しつらい)

2020/10/21(水)18:00 img
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折り取りてはらりと重きすすきかな 飯田蛇笏
渾沌は阿呆なるらん苔の花 永田耕衣

Hyper-Editing Platform【AIDA】の会場である本楼には永田耕衣(0024夜)と飯田蛇笏の短歌の書(松岡正剛・筆)がひそやかにしつらえられていた。Season01のテーマである「文明」が耕衣の歌に、「生命」が蛇笏にそれぞれ加筆されている。

 

◉「すすき」と「苔の花」は植物の一対。すすきは、秋の季語で七草のひとつにかぞえられている。漢字で「薄」とも「芒」とも書く。同じイネ科の「葦」(アシ)とともに茅葺(かやぶき)の材料になった。

 

◉日本の古代神話は「豊葦原水穂国」と美のシンボルとして「葦」を持ちだした。そんなふうに葦が美しいとか、すすきの重さやスキやキライを人間が交わすようになったのはなぜだろうか。ヒトザルがアドレッサンス(発情期)を失ったからなのだろうか。

 

◉転がる石に苔は生えない(A rolling stone gathers no moss)。この英語のことわざは苔の見方で解釈がカワル。日本人は断然、『苔とあるく』(1614夜)派だろう。コケ派とシダ派でも分かれる。もしも『シダの扉』(1476夜)の向こうを知らないとしたら、世界の半分を知らないことになる。

 

◉そもそも陸上化の先頭を切ったのがシダだった。海の中のシアノバクテリアに始まった藻類が陸上化してシダ植物になった。さらにどこかのタイミングで地面にへばりつく蘚苔類が分岐した。「シダ」と「コケ」、「葦」と「薄」、「耕衣」と「蛇笏」、この微妙なAIDAのキワに迫っていくことからハイパーエディティングは機動する。

  • 金 宗 代 QUIM JONG DAE

    編集的先達:宮崎滔天
    最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
    photo: yukari goto

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。