何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

膨大な記事の中から、イシス編集学校の目利きである当期の師範が「宝物」を発掘し、みなさんにお届けする過去記事レビュー。今回は、9月に開催される第88・89回感門之盟のテーマ「遊撃ブックウェア」から、「ブックウェア」をお題に、3人の師範が記事をセレクトしました。いったいブックウェアって何?
山崎智章 43[花]錬成師範の発掘!
■【セカドク・ノート】②内側の木蓮
一斉に開花した象牙色の木蓮のイメージが、記憶を想起し言葉を紡ぐ。松岡正剛校長初期の著作『眼の劇場』から「内側の木蓮」を世界読書奥義伝[離]の火元組、小坂真奈美方師が読み解く。ブックウェアとは読み書きするする我々と本の間質材。例えば読書する環境や、一緒にとる飲食物、読書の時着るもの(ウェア)だってそれだ。本に書かれた内容を、この間質材も混ぜ込み脳に情報系列として刻むことで、それは唯一無二の記憶となる。またある時間質材は記憶を連鎖的に引き出す「機」(トリガー)ともなる。木蓮の記憶はノヴァーリス、華厳経、ホワイトヘッドにメーテルリンク達を引き出す「機」となり、セカドク[離]の香りを漂わせはじめる。
相部礼子 55[守]同朋衆の発掘!
見よ、この笑顔を。記事に添えられたナビゲーター2人のはじけんばかりの笑顔を。コロナ禍ゆえにオンラインで、手に手をとって、いや、思いと思いをつなげて、積ん読本という未知の世界の扉を開いた90分。その体験は「ギュッと要約オニギリを結」んで、インプットからアウトプット─本の紹介─へと結実。あっという間の三冊屋、4組が出来上がり。「これ、読みたい」が、いつしか「読まなくちゃ」の義務感に変わってしまう積ん読本。それを友達にしてしまう時間になったに違いない。本と本とで結ばれて、ぶつけた思考同士で結ばれて。知らない本とも結ばれる。色んなところにお友達作っちゃう、それがブックウェアなんだね。なるほど。笑顔に納得。
北原ひでお 54[破]評匠の発掘!
■【三冊筋プレス】プルーストを読み通す方法(松井路代)
読書をしていると、時折、到底登りきれない高い峰を垣間見ることがある。「編集かあさん」こと松井路代さんが出会った、世界一長い、この小説もその1つだ。読み始めるまで22年。子育て、夫の病、かつて想いを寄せた人の消息。日々揺れ動く日常に霞む峰を、いかに見失わず登り始めることができたのか。夫が集める関連本で、周辺を調査し、子どもたちの成長を見守って、一歩を踏み出した。そのときブックウェアがもたらす、読書と人生の時空が重なり合う大切なトポロジーに気付く。プチット・マドレーヌの香りやアンスリウムの赤に呼び起こされる過去を、ただの失われた時にしないためにも、僕たちはブックウェアを支えに頁を繰り続けていくべきなのだ。
本は決して「静的」なものではありません。それどころか、最も「動的」なものです。本はハードウェアであり、同時にソフトウェアであり、ヒューマンウェアでもあるのです。言い換えれば、本の力を最大限に引き出す動的な読書とは、《本がさまざまな動機と目的と生態をもって動くようにすること》(松岡正剛『松丸本舗主義』青幻舎)なのです。それを松岡校長は「ブックウェア」と名付けました。3人の師範の「ヨミ」にも、「ブックウェア」が躍如しています。
アイキャッチ/阿久津健(55[守]師範)
編集/バニー新井、角山祥道(43[花]錬成師範)
◎「発掘!」バックナンバー◎
発掘!「めぶき」――当期師範の過去記事レビュー#01
発掘!「アフォーダンス」――当期師範の過去記事レビュー#02
●イシス編集学校 第88・89回感門之盟「遊撃ブックウェア」
★54[破]、43[花]の方はこちら
■日時:2025年9月6日(土)12:30-19:30(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年8月29日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom88
★55[守]の方はこちら
■日時:2025年9月20日(土)13:00-19:00(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年9月12日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom89
イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
3000を超える記事の中から、イシス編集学校の目利きである当期の師範が「宝物」を発掘し、みなさんにお届けする過去記事レビュー。今回は、編集学校の根幹をなす方法「アナロジー」で発掘! この秋[離]に進む、4人の花伝錬成師 […]
纏うものが変われば、見るものも変わる。師範を纏うと、何がみえるのか。43[花]で今期初めて師範をつとめた、錬成師範・新坂彩子の編集道を、37[花]同期でもある錬成師範・中村裕美が探る。 ――なぜイシス編集学 […]
おにぎりも、お茶漬けも、たらこスパゲッティーも、海苔を添えると美味しくなる。焼き海苔なら色鮮やかにして香りがたつ。感門表授与での師範代メッセージで、55[守]ヤキノリ微塵教室の辻志穂師範代は、卒門を越えた学衆たちにこう問 […]
ここはやっぱり自分の原点のひとつだな。 2024年の秋、イシス編集学校25周年の感門之盟を言祝ぐ「番期同門祭」で司会を務めた久野美奈子は、改めて、そのことを反芻していた。編集の仲間たちとの再会が、編集学校が自分の核で […]
「物語を書きたくて入ったんじゃない……」 52[破]の物語編集術では、霧の中でもがきつづけた彼女。だが、困難な時ほど、めっぽう強い。不足を編集エンジンにできるからだ。彼女の名前は、55[守]カエル・スイッチ教室師範代、 […]
コメント
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2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。