七福神だよ、迎春多読な招福おみくじ本!(7)

2021/01/10(日)08:00
img LISTedit

 今日で1週間の、おめでとうございます。明日は多読ジムseason05の開幕日です。本の世界から幸せと出会いを運ぶサッショーこと大音が、おみくじ本第七弾を名残惜しくもお届けします。


●あらゆるものにアーキタイプを、異なるもののあいだに関係を。

 

 七人目、ジム最終日の午後になっても諦めない読衆さんがいました。【スタジオだんだん】福澤美穂子さんです。編集学校のあちこちを韋駄天走りでご活躍、ご存じの方も多いイシスの花形ですよね。2020年を託した本は『子どもの本のもつ力』清水真砂子/大月書店+『方法文学』松岡正剛/角川ソフィア文庫

 

2021年への抱負、聞いてみました:


 2020年は多読ジムに通った一年だった。特に後半「生命に学ぶ」ことに慣れ親しみ、そのおもしろさ、新鮮さを実感する糸口をつかむことができ感謝している。代わりに浮上してきたのが、歴史がアタマに入っていない、という悩み。そこで2021年は「歴史」を意識してジム通いしたい。現在だけでなく、幅のある時間の流れの中で広くモノゴトを見ることができるようになりたい。あらゆるものにアーキタイプを感じ、異なるもののあいだに関係を発見するワクワクの毎日が待っていますように。

 

 

 うーん、噂の通り欲が深い(笑)。そのワクワクが山となるか、海となるか。ガラガラ・ガンガンガン!

 

 おお、末吉? いや、推吉か。うーん、残り物に福とはいかないようですが、弁天さまもオランピアも「一陽来復」「推理肝心」と口を揃えてますっ。

 


『緋色の研究』 アーサー・コナン・ドイル著・延原謙訳/新潮文庫・鮎川信夫訳/講談社文庫・阿部知二訳/創元推理文庫

 

 628夜では阿部知二訳が挙げられていますが、リンク切れです。現在このバージョンはKindleのみで流通、代わりに深町眞理子さんや日暮雅通さんの新訳が登場しています。薄い本なので、何通りか比較してみるのもいいですね。ともあれ本作はインドから帰国したワトスン博士がベーカー街221番地Bに「風変わりな友人」と住み出した記念の第1作。二人は1881年にルームシェアをするんですね。ワトスンは、友人が「地球が太陽のまわりを公転している事実を知らない」ことに驚き、「今それを教えてもらったから、今度は早速忘れるように努力しましょう」と告げられて二度びっくりします。

 

 子供の頃はホームズの「推理」の力もスーパーヒーローなら当たり前と思っていたはずですが、今読むとそのアブダクションが観察+結合そしてリヴァース・エンジニアリングの賜物であることがわかります。勉強熱心な福澤さんにとっても、きっと「関係発見」のための役立つ道具になるはず。『シャーロック・ホームズの思考術』マリア・コニコヴァ/ハヤカワノンフィクション文庫もサブ・テキストにどうぞ。

 

福澤さんからエディストの皆さんへの伝言は:

「情報の歴史21」の発売も楽しみです。

 

…運勢:(理に)(あり)

 

(本書からのお言葉)
「では、復習するんですな──たしかにその必要がある。太陽の下に新しきものなし、さ、皆、いつか以前におこっている」(阿部知二訳)

 

   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡

 

 以上、7本のおみくじ本は、不透明な2021年に幸を招いてくれる本ばかり! 

 今年も、読まな許しまへんでー。

 

  • 大音美弥子

    編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。