何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

募集開始(2025/5/13)のご案内を出すやいなや、「待ってました!」とばかりにたくさんの応募が寄せられた。と同時に、「どんなプログラムなのか」「もっと知りたい」というリクエストもぞくぞく届いている。
通常、<多読スペシャル>では、内容の詳細は開講まで“おあずけ”なのだが、熱い期待の声にお応えして、今回は特別に、ほんの一端だけ、プログラムの特徴を”チラ見せ”したい。
重畳性、複合性に富む杉浦康平にどこから、どのようにアプローチするか。これがなにより「杉浦康平を読む」ための肝になる。その視点を3つ、ご紹介。
◎『ヴィジュアルコミュニケーション』から『万物照応劇場』へ
◎杉浦デザイン語法――乱視的世界像と一即二即多即一
◎『遊』にはじまる――杉浦≒松岡 コレスポンダンス
◎『ヴィジュアルコミュニケーション』から『万物照応劇場』へ
アジアの森羅万象を生み出す“多主語的なるもの”を、杉浦康平はいかにデザイン言語に転換してきたのか。
『万物照応劇場』シリーズにこそ、その秘密が潜んでいるが、そこへ至る探究の旅は、じつは『ヴィジュアルコミュニケーション』(「世界グラフィックデザイン体系 第1巻」講談社)という一冊から始まっていた――。
若い頃(1976年)に『ヴィジュアルコミュニケーション』という図解がいっぱい集まった本を編集していますが、いつもあれくらいのイメージや図の物量が日々更新されて、私の頭の中や身体中を駆けめぐってゆく…。
――『杉浦康平のアジアンデザイン』
アジア的なものは何を教えてくれたのかというと、物が生まれ出るときにはいろんなものを無数に引きずって現れるのだ…ということです。すっきり、さっぱりとした顔で「はい。こんにちは」と出てくるんじやない。ざわざわといろんなものを連れ添って現れる。そのざわめきを形にしてみたいというのが、私のアジアをテーマにしたデザインの骨子になる。ざわめきとともにある生命観といったものの萌芽が、この場にも現れているということかな…
――『疾風迅雷』(松岡正剛との対談:「意表」と「ざわめき」より)
◎杉浦デザイン語法――乱視的世界像と一即二即多即一
「乱視的世界像」と「一即二即多即一」。
この二つが杉浦デザイン語法の核心だ。
眼球は決してジッとしていない――。「乱視的世界像」は、雑誌『遊』の連載タイトルとして、松岡正剛が杉浦康平のために名づけた概念でもある。
「一即二即多即一」は、アジアにひそむホロニック・シンフォニーのグラフィックスコアであり、書物の構造がまさにそのコンセプトを実現している。
本はともかく動くものであり、変化するものだ…ということです。一冊では収まらず、シリーズものだと少しづつの変化を重ねて連続してゆく。こう見てくると、紙の束としての本は「一であり多であって、静であり動でもある」という矛盾する要素を一冊のなかに平然と併せ持つ。「変幻自在な構造体」なんですね。
――『杉浦康平のアジアンデザイン』
杉浦デザイン本ではそもそもの組み立てにおいて、「何が何からでるのか」ということ「何が何に及ぶのか」という“from-to”がたえず意図されてきた。(略)その手法と哲学はまことに多種多様、多彩多岐、多味多香にわたっている。そのために動員されたアイテムも尋常じやない。フォント選定、書き文字、引用図版、テクスチュア、罫の肥痩や濃淡、分配と分割、色彩の配置とずれ具合、地紋のあしらい、ノイズの導入、ギュメの強調、小口の表情、背表紙と見開きの連動、ときには帯とヴィジュアル・コノテーション(視覚的含意)……などなど、ありとあらゆる要素と見え方の可能的関係が動員され、考慮され、大胆果敢に組み合わされてきたわけだ。
――『脈動する本』(松岡正剛「わが宿は四角な影を窓の月」より)
◎『遊』にはじまる――杉浦≒松岡 コレスポンダンス
『遊』『ヴィジュアルコミュニケーション』『全宇宙誌』などの編集デザインにおいて、杉浦康平と松岡正剛は実際にどのような身ぶりと言葉を、どのようなインタースコアを交わしていたのだろうか。
対談や著作など厳選した記録を手がかりに、杉浦≒松岡のコレスポンダンスを再生し、編集工学の新たな可能性を浮上させる。“SMコンビ”へのオマージュを込めて――。
70年代になると…、あるいは直前の68年くらいだったかな、私の前に松岡正剛さんが現れた。『遊』の第1号(71年1月号)に「視覚の不確定性原理」というテーマで松岡さんからインタビューを受け、思いつくままにずっと話したわけなのですが、あの中でもそうした微振動的な話題がいっぱい詰まっていて、どこに向かって展開していくのかわからない不確定対談になっています。70年以降は夜になると松岡さんが電話をかけてきて、深夜まで、むしろ明け方の3時頃まで、そういう話をし続けている…。だから仕事が終わった深夜は、そのような微振動的な世界観というものがいろいろな恰好で揺さぶられつづけ、昼間はそれをデザインというものに変換し、整理し直す…ということをやっていた。昼の部と夜の部の二重構造のような思考空間が、ある意味ではとてもいい訓練になったのです。
――『杉浦康平のアジアンデザイン』
各号の『遊』のデザイン・イメージはほとんど一瞬のうちに定着する。主題を告げる松岡さんとの深夜の交信、一本の電話線の波動の中で…である。
――『疾風迅雷 杉浦康平 雑誌デザインの半世紀』
冒頭にも書いたように、想像をはるかに超える、高い熱量の反響が寄せられている。
まだ迷っている方は、どうぞお早めに。まだ間に合います!
Info 多読スペシャルコース 第6回「杉浦康平を読む」
【受講期間】2025年6月28日(土)~8月10日(日)<6週間>
「オープニング・セッション」6/28(土)
*オンライン参加可
【受講資格】イシス編集学校 [破]応用コース修了者
【定員】30名 *定員になり次第、締め切りになります。
【受講料】99,000円(税込)
【お申込み】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_sp2025
「杉浦康平を読む」に決定! 多読SP第6弾【先着30名】
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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コメント
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2025-10-02
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『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。