何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

咲くは桜か、発想の花か。<多読ジム>season14・春(2023年4月10日~)が桜の開花にあわせて始まります。
今回のラインナップはこちら。
<1>ブッククエスト :デヴィッド・ボウイの30冊
<2>三冊筋プレス :歌う3冊 ◆版元企画:青林工藝舎
<3>エディション読み:『サブカルズ』
桜といえば花見。花見といえば歌がつきもの。今回は、「本」で歌ってみようではありませんか。
■言霊妖怪デヴィッド・ボウイで叫べ
そこでブッククエストでご用意したのは、「デヴィッド・ボウイの30冊」です。
なぜボウイ? なぜロッカー? こう思ったあなたは、「千夜千冊」でこっそり、「デヴィッド・ボウイ」と検索してみてください。松岡校長が事あるごとにボウイに言及していることに気づくでしょう。
例えば……。
《レッド・ツェッペリンがそうであり、デヴィッド・ボウイがそうであったように、マーク・ボランもイギリスの血と音をたぎらせた言霊妖怪なのである》(#0216「ロックの伝導者」)
「デヴィッド・ボウイの30冊」の元ネタは、『Bowie’s Books デヴィッド・ボウイの人生を変えた100冊』(亜紀書房)。音楽ジャーナリストのジョン・オコーネルが、2002年に実際にボウイにインタヴューを行い、彼が首ったけになった100冊とその理由を聞き出した本です。
実はこの本、校長が「いつか千夜千冊したい」と密かに温めている一冊で、角川武蔵野ミュージアムの「館長通信 No.38」でも熱く語っていいます(少しだけ引用してみます)。
ボウイはなぜ、ぞっこんの本を告白したのか。
《ボウイにとってのステージソングは、好きな本によって内側に差し込んできた未知の世界との出会いを曲に乗せ、声を震わせ、お気にいりの恰好で歌ってみせることだったのである》
自分の数奇をさらけ出すことは、ボウイにとって、歌うことと同義だったのです。本との出会いが歌に繋がっていたともいえるでしょう。
ではボウイのごとく、数奇な本を白状するとどうなる?
《本はそのうち歌い出し、踊り出すに決まっている》
ああ、歌いたい! 踊りたい! そんな思いを、多読ジムでは言葉にしていきます。
■本は歌う、わたしも歌う
言霊妖怪ボウイで歌い踊るなら、恒例・三冊筋プレスのテーマも「歌う3冊」。
武満徹の『音、沈黙と測りあえるほどに』を持ち出してもいいし、『グレン・グールド著作集』でピアニストの方法に深くもぐりこむのもいい。ミュージシャンの自伝や作詞家・作曲家のエッセイ、音楽史もあり。クラシックに童謡、オペラに演歌、ジャズに三味線、パンクに浪曲、ジョン・ケージにAdo。本になっている「歌」や「音楽」を、あなたの五線譜上で繋げてみるのはいかがでしょう? 思いもよらない「わたし×本の歌」が聞こえてくるはずです。
さらに、今回は特別に、出版社コラボ企画として齋藤なずなの漫画『夕暮れへ』(青林工藝舎)をご用意しました。齋藤なずなの描く、「飾らない日常」に耳を澄ませば、きっと「あの歌」があなたの琴線を震わせることでしょう(『夕暮れへ』の紹介、著者コメントは、別記事で!)
■校長の「歌」を聴け!?
歌・歌・踊・歌……とくれば、エディション読みはこれしかありません。そう『サブカルズ』です。
これぞ校長のシャウト。ポケモンに萌え、ゲームにラノベ、ヒップにクール、東浩紀にウォーホル、ユーミンにノーマン・メイラー。『サブカルズ』で取り上げられているのは、サブカル“ズ”としかいいようのない、同一や平均からこぼれ落ちた、雑多で多様なものたちです。だからこそ誰も捉え切れていなかったものたち。そこに校長は視線を向けます。
例えば「パンク」に対するくだり。
《サブカル・パンクは社会の潜在的欲望の発露である。それが当初は貧困すれすれ、差別ぎりぎり、堕落きわきわであることが、つねに奔放なファッションとスタイルを発動させた。
それは世の中に対してはたいてい「場ちがい」「用途ちがい」という矛盾を突き付ける。だからそれらはいつだって社会の「ノイズ」(雑音)として切り捨てられる宿命をもっているのだが、だからこそそのノイズはジュネのワセリン・チューブのような、ちっぽけではあるが、許しがたい主張力をもった開口部になりえたのだった》(#1735夜「サブカルチャー」)
サブカルカルチャーとは何か。
「場ちがい」でも「用途ちがい」でもない。語るに値しない「ノイズ」なのでもない。私たちがこれまで、語るべき言葉(方法)を持ち得なかった、というべきなのでしょう。
サブカルから特有のスタイルを抽出し読み解く校長にならって、本書の中のさまざまなスタイルから選び取り、あなたなりの歌を奏でてみてはいかがでしょうか。
ちなみに松岡校長、近々、NHK番組でサブカルチャーについて語るそうです(第1回放送は3月4日!)。これも楽しみですね。
歌う阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら歌わにゃ損々。
さあ、花の散る前に参集し、いざ多読ジムでともに歌わん。
Info
◉多読ジム season14・春◉募集中!
∈START
2023年4月10日〜6月25日
※申込締切日は2022年4月3日
∈MENU
<1>エディション読み:『サブカルズ』
<2>ブッククエスト :デヴィッド・ボウイの30冊
<3>三冊筋プレス :歌う3冊
★多読コラボ:青林工藝舎
∈URL
https://es.isis.ne.jp/gym
∈DESIGN the eye-catching image
山内貴暉
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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コメント
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2025-10-02
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