何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

<多読ジム>season13・冬(2023年1月9日〜)のラインナップが決定しました。
<1>エディション読み:『芸と道』
<2>ブッククエスト :白州正子と寿ぐ
<3>三冊筋プレス :食べる三冊
★コラボ:MEdit Lab
次シーズンのseason13・冬は、1月9日スタートということで、「お正月らしさ」を押しだしたテーマになっているのが大きな特徴です。
まずお正月といえば、テレビではお笑い特番のてんこ盛りですね。東西ネタ合戦や名人寄席では、漫才師やモノマネ芸人、落語家たちが芸を競い合います。また、テレビの外でも「新春」の冠をつけ、新春能楽祭や新春歌舞伎が催され、正月日本は芸が華やぎます。
●人の弱さが芸だっせ
そこで読むべきは、これしかない。『芸と道』。本書を手にとって、まず目を引くのは「人の弱さが芸だっせ」という帯文の言葉です。「弱さ」が「芸」であるとはどういうことなんでしょう。そもそも「芸」とは何か、「芸人」とは何か、それから、「芸を語る」とはどういうことなのか。
「第一章 世阿弥に始まる」に始まって、『芸と道』の一冊には、これらの問いがすべて網羅されています。芸を読み、芸を語る方法がここにぎっしりと詰まっています。
●明けまして白州正子を読みまくる松の内
次のブッククエスト「白州正子と寿ぐ」は、ご自身も能舞台に立ち、この人こそまさに「芸と道」の人とも言いたい白洲正子の特集です。
とはいえ、「どうして白洲正子がお正月なの?」と思われる方もいるかもしれません。実はこれは松岡校長の「正月こそ白洲正子だ」という見方に肖っています。
かつて松岡校長は「SANKEI EXPRESS」というタブロイド誌に「BOOK WARE」という連載を執筆していました。その「BOOK WARE」の2016年の正月の記事が「明けまして白洲正子を読みまくる松の内」というタイトルで、白洲正子のエッセイを紹介するというものだったのです。タブロイドの記事はウェブ記事としても公開されており、下記のURLから読むこともできます。
BOOKWARE「明けまして白州正子を読みまくる松の内」(SANKEI EXPRESS)
https://www.sankeibiz.jp/express/news/160106/exg1601061900002-n1.htm
松岡校長にとって、白洲正子は非常に深い思い入れのある人物のようで、そのことは千夜千冊893夜『かくれ里』にも綴られています。千夜の次の文章では、白洲正子の「らしさ」を校長なりに捉えていて、とても興味深いです。
中身もさることながら、「お能」というふうに「お」がついているところがいかにも白洲さんらしいところで、これは学習院女子部幼稚園のときに二代梅若実にお能を習い、11歳には「この世は仮の宿」とか「生死を離れる」といった生意気な言葉をカタコトでおぼえて遊んだ人ではならでのこと、14歳には女人禁制の能楽堂で「土蜘蛛」を舞い、その後にアメリカの全寮制に入ったのちに日本に戻ってからもまた能に打ちこんだのに、女には能はできないときっぱり諦めた人が言う、その「お能」なのである。
●「食べる」と言えば、どんな本?
さて、お正月といえば、おせちやお餅。餅腹三日、寝正月、正月太りなんて言葉もあるとおり、「食」の正月でもあります。そこで三冊筋プレスのテーマは「食べる三冊」です。みなさんは「食べる」というとどんな本が思い浮かびますか。
直球勝負をするなら、食のエッセイやレシピブック、食がテーマの小説やマンガがありますね。最近の芥川賞受賞作は高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)でした。こちらは「遊刊エディスト」の「ISIS BOOKREVIEW」でも紹介されていましたね。
https://edist.isis.ne.jp/nest/akutagawa-award-review-by-pathologist/
●魯山人から進撃の巨人まで
それから例えば、『芸と道』につなげるなら、落語にはよく食べ物の話が出てくるし、落語家には食通が多いように思います。白洲正子には『器つれづれ』(世界文化社)という本があります。器の目利きといえば、白洲正子の師匠である青山次郎や魯山人も欠かせませんね。白洲正子のお孫さんである白洲信哉の『旅する舌ごころ 白洲次郎・正子、小林秀雄の思い出とともに巡る美食紀行』(誠文堂新光社)なんて本もあるようです。
いま、多読ジムSP「村田沙耶香を読む」が進行中ですが、村田さんの「生命式」という作品も「食べる」本と言っていいでしょう。これは簡単にいうと人が人を食べるカニバリズムのお話です。大ヒットマンガ『進撃の巨人』や『 東京喰種トーキョーグール 』、『寄生獣』にもカニバリズムのシーンが描かれています。
イシスの動向に合わせて、やや極端な事例を挙げましたが、狩猟採集と農業文明、町中華とファストフード、宇宙食と発酵食…と「食」はあらゆる時代の文化と文明に関与しています。食こそ文化と文明だ、と言ってもいいくらいです。その中で読衆のみなさんがどんな「食べる三冊」を選ぶのか、非常に楽しみにしています。
●MEdit Labとコラボする
最後に版元コラボのお知らせです。
今回は緊急特別企画ということで、「版元コラボ」は一回お休みして、多読ボードの小倉加奈子析匠が立ち上げた「MEdit Lab」とコラボすることが決定しました。エディストでも記事になっていましたが、「MEdicine(医療)×Edit(編集)」を掲げるMEdit Labは11月に公式ウェブサイトがオープンした、いまが旬のプロジェクトです。コラボ企画の詳細はまたのちほど発表いたします。こちらもお楽しみに。
https://edist.isis.ne.jp/nest/meditlab_open/
「一富士二鷹三茄子」ならぬ「一食二芸三白洲」の夢を膨らませて、縁起の良いお正月を迎えましょう。
Info
◉多読ジム season13・冬◉
∈START
2023年1月9日〜2023年3月26日
※申込締切日は2022年1月2日
∈MENU
<1>エディション読み:『芸と道』
<2>ブッククエスト :白洲正子と寿ぐ
<3>三冊筋プレス :食べる3冊
★コラボ:MEdit Lab
∈URL
https://es.isis.ne.jp/gym
∈DESIGN the eye-catching image
山内貴暉
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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コメント
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2025-10-02
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『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
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