お題をたっぷり引き受けて次へー原田淳子[破]学匠メッセージ【感門84】

2024/09/15(日)17:14
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2024年7月、NHKの人気番組「100分de名著」で、ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』が取り上げられた。世界中に残るあらゆる英雄伝説型の神話には、「旅立ち→試練→帰還」という共通の構造がある。現代人はそれを学ぶべきだという内容だった。

 

その放送を見て、「私たちは25年前から学んでいる!」と密かに叫んでいた者がいた。イシス編集学校[破]コース学匠・原田淳子だ。[破]で学ぶのは、校長・松岡正剛の仕事術。とはいえそれは、「読むだけで身につく〇〇スキル」というようなノウハウの類いではない。文体・クロニクル・プランニングそして物語の編集術を、1ヶ月ごとの稽古を通して体得するのである。第84回感門之盟「25周年番期同門祭」の舞台に立った原田学匠は、52[破]の4ヶ月間の舞台裏を明かした。

 

「破の指南とはどのようなものであるべきか」とある師範代の問いかけに、かつて松岡校長はこう返した。「師範代が自由と思えるのが破の指南」だと。これが、原田学匠をはじめとする指導陣が、今期向き合ったお題だった。

 

師範代とは、単なるファシリテーターではない。既知と未知の狭間に挑む学衆を喝破し、断崖絶壁の打破に誘い、差し掛かりの走破へと導く。原田学匠は、その師範代が自由を感じられる指南とはなんなのだろうかと考えたという。

 

「自由のためには相応の『用意』が必要だと思いました。そこで、錬破(開講前の師範による師範代向けトレーニング)では、師範の皆さんに前期以上に厳しく当たってもらいました。」

 

ときには師範代の得意手をあえて封じて、苦手に向かわせるような指導もあったという。こうした師範ー師範代間での密な対話を重ねるうちに、師範代も指南への自信が表れてきた。その姿勢に、学衆からも「この師範代にあたっていっていいんだな」と思われるような信頼が寄せられるようになったという。

 

73人で出発した52[破]は、なんとちょうど52人で帰還した。これにて「めでたしめでたし」と思われたが、原田学匠は「突破率は71%でした。まぁ、破としては普通ですね」とぴしゃり。

 

松岡校長曰く、破で学ぶのは、「ぶっち切るための方法」。

「お題をもっと多めに引き受けて、編集道を歩んでほしい」と背中を押された突破者たちは、次なる旅立ちに向かう。

 

文:中尾拓実

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。