何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

伝へて習はざるか。
千夜千冊996夜 王陽明『伝習録』では、『論語』学而の「伝不習乎」を引いて、「伝習」の意味を説いている。雛鳥が飛び方を学ぶように、人が真似て、何事かに集中していくことが「習」の字には込められている。師範が伝えて、師範代が習う。いや役割を超えて互いに伝えて、習う。イシス編集学校では師範や師範代が集って学衆に示すべき指南の方法をめぐる場を「伝習座」と呼び、25年に渡ってイシス編集学校の中だけで178回に渡って行われてきた。
その伝習座が25年の禁を破り、装いを全く新しく、無料でLive配信される第三回目になる。オールイシス編集学校の半期に一度の村立て、一座建立の編集顔見世になる。2025年9月に開催される今回は、どんな伝習座になるのか。その仕立てと見どころを紹介しよう。
<今福龍太が問う新たなる我々の憲法>
父なる編集工学、母なるイシス。
伝習座のプログラムは2つのメインコンテンツで構成されている。まずは、「父なる編集工学」としてのISIS co-missionで『仮面考』(亜紀書房)を上梓したばかりの文化人類学者・今福龍太によるインタースコア・セッション。今回のテーマは「花綵列島の新たなる憲法」である。著作『わたしたちは難破者である』(河出書房新社)で「群島響和<並行>憲法」を試論として示した今福龍太が、10年の時を経て「編集工学」と重ねて考える、新たなる我々の方向性とは何か。今福から参加者への問いと音楽、映像が重なる独自のスタイルのセッションになるだろう。
〈わたし〉とは、仮面である。〈素顔〉こそ、仮面である。今福龍太による新著『仮面考』。ブックカバーが仮面のように覆い、隙間から表紙デザインがチラ見えしている。写真家・石川直樹によるインスタントカメラによる粗い写真、ページの至るところに組み込まれた記号やノイズ。コロナ禍のマスク、顔認証IDなどの現代的課題と能面、原始の仮面の力との対比、和辻哲郎,戸井田道三,金芝河,レヴィ゠ストロース,ボルヘス,アンソール,安部公房らの作品と重ねた深い思索。現代の我々に本来の変身可能性を取り戻すことが呼び掛けられる。
「母なるイシス」は、松岡正剛校長講義の語り直し「Re-Mix校長校話」である。今回は「花綵イシス」と題して、『見立て日本』のスライドをいくつも使いながら、情報の始まりから自己組織化までを一気に語り切った松岡正剛の講義が題材になる。過去のレクチャー動画をもとに、参加者が喧々諤々のインタラクティブ・ディスカッションは、昨年急逝した校長・松岡正剛の編集工学講義を改めて語り直し、再編集することで、松岡正剛を再生させる機会になる。「情報編集」の流れとはどのようなものかという内容と共に、松岡正剛の独自のスタイルを垣間見る機会にもなる。
週刊ポストで当時連載されていた「百辞百物百景色」が意外な組み合わせで次々に紹介され、情報が編集化されていく流れを一気に語り切った。「百辞百物百景色」はその後『見立て日本』(角川ソフィア文庫)として出版されている。
<左近右近が挟み、三匠が進める>
前半の今福龍太によるインタースコア・セッションでは、左大臣、右大臣ならぬ左近・右近という二人の進行役が用意されている。いや、進行というよりはノイズかもしれない。今福の講義レクチャーに突如割って入り、想定外の問答が差し挟まれる。予定調和を嫌う今福龍太との掛け合いがどうなるか。今回の右近と左近が今福に何を問うのか、今福の問いにどう答えるのか、講義にどう切り込むのか注目である。左近には、遊刊エディストの副編集長であり、松岡正剛から「代将」の名を授かった金宗代。右近にはイシス編集学校の中部支所「曼名加組」の小島伸吾組長。金代将は「多読スペシャル今福龍太を読む」のお題を担当し、小島組長は今福龍太が監修する多読アレゴリア「群島ククムイ」の一員。この二人しかいないという右近左近となった。予定調和を嫌う今福にどう切り込むのか期待したい。
後半のREMIX校長校話「花綵イシス」に登場するのは三人官女ならぬ三匠。イシス編集学校の守破離の講座リーダーである鈴木康代学匠、原田淳子学匠、太田香保総匠が揃い踏みで、松岡正剛の校長講義を甦らせる。忖度なしの守破離エディットマッチ、いきなり名指しされた師範、師範代は果たして見事に切り返せるのか。全体の進行は、YouTube「おっかけ千夜千冊ファンクラブ」でお馴染み、イシス編集学校 林頭・吉村堅樹がつとめる。
ISIS co-mission今福龍太初めての伝習座講義。新しい伝統、歴史の3ページ目、知のエンターテインメントの開闢。イシスの最先端が見れる伝習座のライブにどうぞご参集ください。
伝習座 「花綵列島の新たなる憲法」
■日時:2025年9月27日(土)14:00〜18:00
■内容:今福龍太講義「花綵列島の新たなる憲法」、Remix校長校話「花綵イシス」など
■参加方法:お申し込み不要。どなたでも参加いただけます。YouTubeイシスチャンネルにて14:00からライブ配信開始予定です。時間になりましたら下記にアクセスください。
▼YouTubeイシスチャンネル
https://www.youtube.com/@es_event/featured
*伝習座LIVE配信はYouTubeライブで無料配信。事後アーカイブ視聴は有料配信(3500円・税別、松岡正剛校長講義動画付き)になります。
過去伝習座映像はこちらからご購入いただけます。
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
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コメント
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2025-10-02
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2025-09-30
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2025-09-24
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