「門」を行き来せよ/八田律師メッセージ【88感門】

2025/09/06(土)13:53
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黒のセットアップの胸元を軽く直していた八田英子律師。司会に呼ばれて壇上に上がるその瞬間、表情にぱっと光が射した。「門」をまたいだのかもしれない。

 

今日、9月6日は「第88回感門之盟/遊撃ブックウェア」開催日。冒頭のメッセージで八田律師は、「感門之盟」の「門」の機能は“内と外を分けること”だと話し始めた。門の内側は教室や道場といった安全な場所であり、突破生や放伝生はその外に出て行くこと、不安も危険も、そしてもちろん魅力もある外の世界へ、方法を携えて歩み出すことが求められているのだ。

 

 

 

メイントピックは、中国の書家、王羲之の「曲水の宴」。酒を嗜み、即興でつくった序文「蘭亭序(らんていじょ)」の出来が素晴らしく、その後何度書き直してもこれを超えられなかった故事を引き、卒意の何たるかを示した。

「今日はお酒は出ないけれど、即興で蘭亭序に残したくなるような言葉が交わされるかもしれません」と律師。この感門の日にこの本楼で、用意も意図もしていなかった言葉がもたらす「禅機」をしっかり掴んでほしいと語った。禅機とは、悟りのきっかけとなる鋭い言葉や動作のことだ。

 

最後に律師は、晩年の校長が「イシスは10年大丈夫だ」と言っていたと明かした。普段は「3年先ぐらいまでしか考えない」と言っていた校長からすれば相当に長い期間で、八田律師はこの言葉に、指導陣への深い信頼を感じたという。

 

 

 

「では、司会の澁谷さんに戻します」

その言葉を合図に律師は再び門をくぐり、優秀な学林局スタッフの顔に戻った。

(写真/福井千裕)

  • 今井早智

    編集的先達:フェデリコ・フェリーニ。
    職もない、ユニークな経歴もない、熱く語れることもないとは本人の弁だが、その隙だらけの抜け作な感じは人をついつい懐かせる。現役時代はライターで、今も人の話を聞くのが好き。

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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。