何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

菖蒲と蓬が軒先に連なり、鯉のぼりと吹き流しが悠々と空を泳ぐ。15週間の51[守]の開講直前、イシス編集学校ではためくのは19色の教室名フライヤーだ。竜を目指す19匹の鯉ならぬ19人の師範代たちが、その跳躍力を総動員して「こんな教室にしたい!」と決意を1枚にあらわした。
遊泳を心待ちにする彼らが、未だ見ぬ学衆に向け、教室名のユニークネスと編集稽古の魅力を語ったのは、4月初旬の伝習座でのことだ。以来、日々新たになる決意、今一度ここに掲げよう。
若水尽きぬ教室の師範代、吉田麻子は、熊本から本楼に馳せた。火の国であると同時に水の国でもある熊本に肖り、学衆各々に潜む編集の泉を掘り起こしたいと志は晴れやかだ。
流れる青白の絵の具が織りなす清涼感モードは、編集世界の元日に相応しい。「あらたまる」ことでこそ、情報はあらたな姿を見せる。神に捧げ、自ら口にする若水。美しい景色と眺めずに、飛び込み飲み尽くしてほしい。
紙面から蒸気が飛び出さんばかりに吹くやかんと同じく、高温なのが、熱~いヤカン教室師範代の和泉隆久である。「火加減を調節して教室を沸かせるのが私の役目」と学衆に向き合う覚悟は堅い。
「やかんモデル」で型稽古を見立てた、インタースコア編集の王道だ。モデルで見ることで「教室の火加減」を工夫しようという思考が働く。イシスの炎によって沸き出す蒸気は、情報と学衆が混然となる「才」だろうか。
カタルトシメス教室の師範代、新垣香子は、校長直筆の教室名カードで埋め尽くされた後景を背負った。前日にアップされた『全宇宙誌』册影帖から「回転」というキーワードを引く卒意が頼もしい。
分けて分けない「カタル」と「シメス」の同時性を、自転車の両輪モデルに託した。浮遊感を支える光の玉は、ETの超能力ではなく編集術だ。言葉づかいが世界そのもの。語ると、パステルアートの物語世界が生まれた。
多くの者が声を震わせるなか、科学者然と冷静なのが、配列変えます教室師範代、森下揚平だ。締切直前まで躍動感にこだわって仕上げた作品だが、学衆と共に更なる配列変えを起こす心積もりだ。
配列の典型DNA螺旋、本の並び、太陽系列に、謎のクレヨンや猫や風鈴が交わり列を乱す。異質こそ「変えます」の契機と謳う「いじりみよ」コピーがそこに呼応した。既知の配列を徹底取材し、未知の運びは猫に委ねる。
三度目の登板となる分人庭師教室の師範代、鈴木哲也は、学衆のため、生まれ変わるが如く自らに更新をかけることを課している。真直ぐな立ち姿から、本楼中に響き渡った清々しい声が耳を離れない。
剪定鋏を振りかざし街を飛び交う庭師土偶。思わぬ組み合わせ編集が、インパクトのあるヴィジュアルを生み出した。土偶は歴史か私たちの形代か? 街にどう編集の鋏を入れるのか?情報同士が出会うとき、想像を生む。
51[守]は、ゴールデンウィーク明けに開講する。教室名フライヤーは、まだ完成していない。学衆を迎えてからが本番だ。変化も成長も急流突破も、異質や異物との出会いによって加速する。教室という場に身を預け、登りきった先には、どのような作品に変身を遂げるのか。皆の衆、いざ出遊だ。
(文:阿曽祐子 アイキャッチ・フライヤーレビュー:阿久津健)
◆イシス編集学校 第51期[守]基本コース◆
日程:2023年5月8日(月)~ 2023年8月20日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
花伝所の指導陣が教えてくれた。「自信をもって守へ送り出せる師範代です」と。鍛え抜かれた11名の花伝生と7名の再登板、合計18教室が誕生。自由編集状態へ焦がれる師範代たちと171名の学衆の想いが相互に混じり合い、お題・ […]
これまで松岡正剛校長から服装については何も言われたことがない、と少し照れた顔の着物姿の林頭は、イシス編集学校のために日も夜もついでラウンジを駆け回る3人を本棚劇場に招いた。林頭の手には手書きの色紙が掲げられている。 &n […]
週刊キンダイvol.018 〜編集という大海に、糸を垂らして~
海に舟を出すこと。それは「週刊キンダイ」を始めたときの心持ちと重なる。釣れるかどうかはわからない。だが、竿を握り、ただ糸を落とす。その一投がすべてを変える。 全ては、この一言から始まった。 […]
55[守]で初めて師範を務めた内村放と青井隼人。2人の編集道に[守]学匠の鈴木康代と番匠・阿曽祐子が迫る連載「師範 The談」の最終回はイシスの今後へと話題は広がった。[離]への挑戦や学びを止めない姿勢。さらに話題は松 […]
目が印象的だった。半年前の第86回感門之盟、[破]の出世魚教室名発表で司会を務めたときのことだ。司会にコールされた師範代は緊張の面持ちで、目も合わせぬまま壇上にあがる。真ん中に立ち、すっと顔を上げて、画面を見つめる。ま […]
コメント
1~3件/3件
2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。