きりんは内科、するめはゴールキーパー。 ならば「わたし」はどう分ける?

2021/11/15(月)11:00
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 「豆腐で役者をわける」。[守]の稽古38題中、8番目のお題タイトルだ。
 売上高や収益率、得票数や偏差値なんぞの数値で分けるだけでは世界は分からない。まったく違うカテゴリーで分けることでこれまでなかった見方が獲得できる──と主張するお題である。動物を診療科で、山をチーズで、魚売り場の商品をサッカーのポジションで、日本の歌手の歌唱を書体でと、48[守]の教室には、意欲ある回答が次々と届いた。

 新たな分類を発見した学衆たちは、2題先の10番で「たくさんのわたし」に出会っている最中だ。「わたし」は何科でどのポジション?カマンベールか青かびか、明朝なのかゴシックか。そう考えるだけで、自分が編集対象になっていく。稽古の振り返りには、自己の広がりと可能性への気づきが綴られている。


編集した自己は、一つとして同じものがないし、弾力性というか、拡張性というか、可能性のようなものが感じられる。(モーラもらもら教室)
自分はこうだな。と決めつけている部分もありましたが、実はそれはほんの一部かもしれないな。などとも思いました。(キャンピング・サティ教室)
最近の自分の変化にも気づくことができたりして、(M型スピリッツ教室)
いろんな場面になれば自分はその都度違う自分がいるということに気づいて書き出していきました。(はいから官界教室)


 自分すらも情報ととらえ、編集し続ける力を励起するのが[守]の稽古である。

 まだ間に合う秋の[守]講座受講。未知へ向かう「わたし」の参加を師範代が待っている。不思議な名前のお題を携えて。

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

コメント

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堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。