何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

書くは永く、放つは刹那に。
師範代未満の入伝生は書き手であるが故に、しばし読み手を忘れて前のめり独りよがりな指南に陥る。回答に潜む可能性を欲するがため、想いが強く表出してしまうのだ。
どんなインパクトがあったのですか。
観客・師範代からどう見えたのかがよくわかりません。
(岡本悟師範)
想い込め放たれた指南に、情けも、容赦もなくバッサリと切る指導陣。回答に書かれている情報だけを読むのではなく、学衆が悩み考え抜き、どのような気持ちをのせて回答に至ったか、目に見えない情報も読み取る力も求められる。指南への指導は、方法の取り出しだけではない。
ちょっと大袈裟ですが「命がけ」で創文してください。
今回もまだ、詰めが甘い。
(牛山惠子師範)
師範代としてカマエはできていたのかと、心身ともに深く指導の言葉が突き刺さる。
「指南─指導─振り返り─再指南」を繰り返すことで、己の不足を避けず真っ向から勝負と言わんばかりに向き合い、磨き、方法に抱かれ、道場で身につけた花伝式目を遺憾なく発揮すべく錬成場で鍛錬が続く。そう、何かが熟するにはつねに「時熱」というものが必要である。
古池や 蛙飛ンだる 水の音
芭蕉が詠んだ句であるが、似ているけれど何かが違う。実は、「古池や蛙飛こむ水の音」という一句ができる前に、最初はできの悪い句から始まっていたことはご存じだろうか。芭蕉は、弟子たちに上五を考えさせると宝井其角は「山吹や」を提案。
「古池や」とするか迷いを芭蕉は隠さない。方角は、「西東」がいいか、「東にし」がいいか、いろいろ置き換えてみる。
(初)古池や 蛙飛ンだる 水の音
(後)山吹や 蛙飛込む 水の音
(成)古池や蛙飛こむ水のおと
世に放たれた句の形に成るまでに、情報を何度も「乗りかえ」「持ちかえ」「着がえ」と推敲を重ねる。師範代が書く指南も同じく、一時で仕上がるものではない。編集の技を駆使して鍛錬していくには、時間と熱意が不可欠である。今も錬成場ではカンカンと回答の鋼を叩き、切れ味に凄みと遊びも潜ませて指南の宝刀を磨くべく火花をまき散らしている。
書き重ねて変わりゆく指南は永遠ともいえるほど時間が過ぎ去っていく。
指南を待つ学衆のため、放つときは一瞬でしかない。
文 堀田幸義(錬成師範)
アイキャッチデザイン 阿久津健(錬成師範)
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イシス編集学校 [花伝]チーム
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2025-10-02
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2025-09-24
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