【受講者募集中!物語講座第18綴】直接ではない、何かを媒介として伝えるのだ

2025/09/11(木)11:30
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先日、90歳になる少し前に義母が亡くなった。その時に京都で、義母の60年来のお友達の方と会食していた。彼女は義母が高校を出て勤めていた銀行の秘書課の後輩で、ずっと長い間、いちども喧嘩をしたこともない、とてもいい付き合いをしてきたそうだ。

出会いは60年前のある日。義母が自分で作ったワンピースを着て颯爽と川べりを自転車で駆けていったそうなのだが、そのワンピースのスリーブのかたちがモダンで素敵だったらしい。「こんなにキレイでセンスのいい女性が四国のこんな町にいるものか!?」と驚いて、そのことが今でも忘れられないのだと。

「義母」のお友達の心のこもった語り口を聴きながら彼女の見た「シーン」を想起しようとするときはじめて、「義母」という薄い膜を隔てたような関係性を越えて、同じ地平で生きている親しい存在に触れたように想えた。その話が聞けてよかった、かけがえのない話だと思った。写真ではなく人が人について語る、その人らしい語り口を通じて、人と人の間に通い合う想いがあざやかに浮かび上がる「シーン」や「イメージ」を言葉で受け継いでいくことがこんなにも感動的なものかと驚いた。

 

18綴 物語講座では編集学校らしく、いろんな方法と物語の型を駆使して編集工学の可能性を拡張してもらいます。

 

自分を脅かすものも、それも笑いものにしてしまえば、ネガティブな力をポジティブなもの転換してしまえる、それが「笑い話」のよいところ。「幼な心」をひとり静かに思い出すことで、たとえ日々現実にすり減らされていくことがあっても、自身の存在の厚みが増してゆく感じを持てる。あるいは、サンタクロースは存在するのか、しないのか?と考えてみる。それは、目に見えるものが目に見えないものよりも大切だと思いがちな傾向を問い直して、物語的な回答を示してみたくなる問いだったりする。

 

あなたの内に潜めたままで、つねに指先の向こうにあって日常言語では届かない異界の中で、自分と見つめ合いながら、世界をさかさまに見たりして、世界とあなたの奥にある物語を、書いてみませんか? 物語ることが世界を解き明かすこと、なんですから。

 

そろそろ一緒に「物語編集術」という方法の冒険に出かけましょう。


文/森井一徳(18綴・物語講座 師範)


Info
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[遊]技法研鑽コース 「物語講座」第18綴
  https://es.isis.ne.jp/course/yu-narrative

■期間   :2025年10月6日(月)~2026年2月1日(日)
       ライブ稽古「蒐譚場」2025年12月13日(土)
        編集工学研究所(本楼)

■資格   :[破]応用コース修了者(突破)以上

■プログラム:窯変三譚/トリガー・クエスト/編伝1910

■お申込みは こちら ※再受講割引あり。
https://shop.eel.co.jp/products/es_yu_mono_018

 

  • イシス編集学校[遊]物語講座

    編集の源に物語あり。世界を見立て、構造化して語り直す、「方法としての物語」を体現する月匠、綴師、創師、師範、師範代のチーム。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。