レオーニ展とセイゴオ千夜のあいだ 開催は9月29日まで@新宿

2019/09/24(火)20:02 img
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 『スイミー』にはレオーニの根本哲学が潜んでいる。千夜千冊第179夜『スイミー』は、この物語の一般的な解釈を覆す。これはみんなで力を合わせようというだけの話ではない。個々の意識は群れ全体と共振し、有機的な意味をなす。「部分は全体を感じているはずだ」と。

 

 レオーニは絵本作家として有名だが、その一方で、時空のあわいに棲む架空の植物を描いた緻密な研究書『平行植物』も著した。1980年、これを工作舎が翻訳・出版して話題となった。新宿駅から程近い損保ジャパン美術館で開催中の「みんなのレオ・レオーニ展」では、平行植物の絵画や立体作品『幻想の庭』も展示されている。

 

『平行植物』(レオ・レオーニ、工作舎)


 松岡正剛校長と「間の本」をつくったとき、レオーニは「セイゴオ、次は二人で大人のための絵本をつくろう」と誘う。だが、残念ながら実現しなかった。二人の幻の絵本は「小石が語る」はずだった。展覧会場では小石どうしがお喋りしているキネティック作品がある。大事な秘密を分かち合っているようなひそひそ声は、何を語っているのだろう。「みんなのレオ・レオーニ展」は9月29日まで。

 

『間の本』



千夜千冊第179夜『スイミー』

 

  • 丸洋子

    編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。

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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。