ピカソ・三島・文太 角刈りのシーザーがもどく

2020/06/22(月)17:46
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老女の理容師がそれしかできないことに気づいた時、すでに遅かった。
青森県で角刈りの井ノ上シーザーの登場となった。2020年6月のことだった。
おりしも、小倉加奈子が似顔絵を描いてくれていた時と重なる。

 

林頭の吉村堅樹によると、小倉加奈子と井ノ上シーザーは「人の迷惑を鑑みない」「周囲の空気を読まない」という点で似ている。だがシーザーに言わせると、二人は対比的だ。

普遍にむかって事象へと方法的に踏み込む小倉に、「なんちゃって精神こそ編集だ」と、ホントとツモリの間を突き抜けるシーザー。一生懸命な小倉に、テキトーなシーザー。いつも笑顔の小倉に、いつも凝視のシーザー。

 

角刈りのシーザーは自身の写真を眺める。
『90歳のピカソの自画像』と似ていることに気づく。

 

                     

(『90歳のピカソの自画像』っぽいシーザー)

 

ピカソの自画像は老いてもなお人間臭い。煩悩が伝わる。面白がって編集学校周りの友人に写真を送る。三島由紀夫の線も行ける、というコメントが入る。上半身裸になり、ミシマを擬いてみる。

 

 

(『薔薇刑の三島由紀夫』擬きのシーザー)

 

ミシマのナルシズムには及ばない。裸に自信がないからか。ちなみに加えているのはネクタイだ。

 

さらには、「菅原文太も!」とのコメントも出てくる。
だが、このカメラ目線は自撮りでは難しい。

 


(眉毛がりりしい菅原文太)

 

角刈りの偶然から「ナルシスマッチョ」や「仁義なき戦い」へと“たくさんのわたし”が現れた。ピカソ、三島、文太。三人の共通点は革命的目力だ。目力のある人だったら、だれでも対象にして擬けそうだ。

やってみたいのだが、狂気の淵へ没頭していく感覚に落ち入る。写真技術の限界もある。しかも、一人遊びなのだ。


井ノ上シーザーは、やめた煙草を無性に吸いたくなった。禁煙を破る気にもなれない。代わりにワインを浴びるようにあおった。

 

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。