横浜銀蝿、「また頼むな」 41[守]伝習座

2019/09/20(金)08:25
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 「本当に歌うの」。41[守]伝習座前夜のリハーサル中、人気のない本楼で吉村堅樹林頭が聞く。

 

 「師範講義では全身で表現するべきだ」。「編集的発見を伝え、笑いもとりたい」。井ノ上裕二師範の決心は固かった。


 翌日、講義中に井ノ上は横浜銀蝿の『ツッパリハイスクール・ロックンロール』を歌った。一人の男性の笑い声が小さく響いた。空振りだった。しかし井ノ上は歌を続けなければならない。タバコ臭が本棚劇場のむこう側から漂ってくる。


 「面白かったぞ。横浜銀蝿とアフォーダンスとは、あれは発見だな」。本楼裏の喫煙所で、松岡正剛校長が井ノ上に声をかけた。「でもな、あそこで歌う必要はないだろう」。声をあげて笑う松岡校長。

 

 「いえ、ウケたのはあなただけでした」。井ノ上は買い言葉を飲みこみ、「また頼むな」という声がけに頭を下げた。

44[守]伝習座は9月末に控えている。

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。