千悩千冊0002夜★サッショーしまっせ[結婚4年目の夫が、とにかく家に物を溜め込みます」30代女性より

2020/11/14(土)10:10
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ミウさん(30代女性・無職)のご相談:
結婚4年目の夫が、とにかく家に物を溜め込みます。
読んでいる気配のない本、演奏しているのを一度も見たことがないキーボード等はまだ「わかる」のですが、加えて金剛杖、南部鉄器のハンドベル、張り子のふくろう、大量のヒーリングCD、チベット体操のDVDなどいつ何に使うのか全くもって不明のものたちが家のあちこちに置かれています。
最近子どもが生まれ、深刻に家が狭く感じるようになったので「物を減らして部屋を片付けて欲しい」と度々訴えているのですが、その度右の物を左に、左の物を右に動かすばかりで全くエントロピーの総量が変わっていません。
どうしたら夫に我が家の空間が有限であることを理解してもらうか、私が用途不明品で生活空間を圧迫された暮らしを許容できるようになるでしょうか。

 

サッショー・ミヤコがお応えします


金剛杖、南部鉄器のハンドベル、張り子のふくろう、大量のヒーリングCD、チベット体操のDVDなど具体的な「何に使うか全くもって不明の」モノの名前を聞かされると、おいおい、部屋の心配の前にする心配があるやろう、とツッコミたくなります。物体としてはどれもそれほど「場所をとる」モノではありませんが、それを見たミウさん(や、たまさか部屋を訪れたママ友など)の心理的負担たるや、部屋の背景はヘビナワと「ドヨ~~ン」に支配され、座る場所さえなくなるよね、とイメージいたしました。お勧めしたいのは、画家・猪熊弦一郎が集めた「物」をスタイリスト・岡尾美代子が選んで、写真家・ホンマタカシが撮影した、この一冊『物物』(BOOK PEAK)です。巻末には「如何なる眉の下に」と題した堀江敏幸のエッセイも入っています。

 

千悩千冊0002夜

猪熊弦一郎(著)、 ホンマタカシ (著)、 岡尾美代子 (著)、 堀江敏幸 (著)、 菊地敦己 (編集)

『物物』BOOK PEAK

 

 

鉛管のオブジェ竹薮から偶然拾ってきた鉛管。

夜中にこの鉛管を色々に折り曲げていると、思いがけない美しい線を発見するという。

このまなざしで、彼は張り子の娘の、心のむなしさよりも強さの方を捉えていたのだろう。
 

子供が成長するにつれ、夫は子供になりたくなるのかもしれないですね。ま、10年までは新婚のうちなので、互いに色々まさぐってみてください。モノ集めより写真集の出版を勧めるのも手、かもね。

 

事理無碍法界<事々無碍法界。
サッショーみやこ、読まな、許しまへんで。

 

 

◉井ノ上シーザー DUST EYE

 

エントロピーとは“混沌と化していく”ことですが、ミウさんは大きな勘違いをしている可能性があります。
ミウさんから「いつ何に使うのか不明」と目されているモノ群は、旦那さんからすると構想している大きなプロジェクトの要素なのかもしれません。
雑多なものたちは、超越的な存在と交信するための曼荼羅である可能性も否定できません。
そうであれば、「モノを減らしてほしい」というミウさんの言葉こそが、旦那さんにとってはエントロピーを増大させるノイズなのです。
ミウさんには、深い反省をもってご主人に陳謝をしていただきたいと思います。

 

「千悩千冊」では、みなさまのご相談を受け付け中です。「性別、年代、ご職業、ペンネーム」を添えて、以下のリンクまでお寄せください。

 

 

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。