何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

未知の体験について、あらかじめ形を与えてくれるのが物語の力だ。
2013年にCINRA.NETに取材されたときの、[遊]物語講座を率いる赤羽卓美綴師の言葉である。記事掲載から7年が経ったが、コロナ禍やリモートワークという未体験の日常と繋がった現在、物語がもつ力は今こそ求められている。
物語という回路は、実は一人ひとりの頭や心の中に埋め込まれており、人が3歳くらいの頃、略図的原型を持ちはじめる。「ブーブー」「マンマ」「ワンワン」など、単語ばかり話していた子供が突如「このブーブー、知ってるよ」などと話し始める。それまでに繰り返し発話していた言葉や記憶が、物語回路によってつながったのだ。
成長に従って、原型だった物語は新たな物語回路として形成されていく。前述したように、これから起こる自分の周りの出来事もひとつの物語と捉えていく。野球部で必死に練習をしている高校球児がいたとしよう。彼は、『タッチ』『MAJOR』といった漫画のサクセス・ストーリーや、甲子園予選で敗退し涙する球児の物語を見て、野球部員の青春ドラマのプロセスを知り、先の見えない自分の物語を前に進めるのだ。
そもそも情報は一面からでは語ることができない。同様に自己という存在も多面的に捉えていく「たくさんのわたし」が出入りして、「こうにもなれる」「ああにもなれる」という、あらゆる可能性を秘めている。野球部の物語以外にも恋愛ストーリー、家族との葛藤、友人との対話、内省する思索。自分自身の未知の物語を動的な可能性に向かわせるために、物語を編集し、動かし続ければいい。物語の型と編集力を携えれば、未来に向けた物語を自在に編んでいくことができるのだ。
「物語編集力」の真髄を極める[遊]物語講座は2020年秋に開講する。受講者の多くがイシス編集学校でもっとも面白い講座だと口々に語るのが物語講座である。それは、全ての編集術、編集力を動員して、リプレゼンテーションに向かっていくことであること、そして物語を書くことで偏狭な自己から解放されていくことが大きいだろう。[遊]物語講座についてはこちらから。
物語がもつ力に関心をもたれた方は、創世記からイシス編集学校にかかわっている赤羽綴師の編集観を、まずはCINRA.NETの記事でご覧いただきたい。
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
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江戸の本屋が仕掛けた文化の渦が、いま開かれた。 7月26日、福井県敦賀市の「ちえなみき」で行われた田中優子学長の特別講演には、50名を超える人々が集まりました。 今年の大河ドラマ『べらぼう』の主人公・蔦屋重三郎を軸に、浮 […]
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コメント
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2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。