【MEditLab×多読ジム】全球凍結時代から男達への手紙(畑本ヒロノブ)

2023/04/11(火)12:00
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多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学にまつわるコトバ・カラダ・ココロワーク」で作成したブックリストから今回のコラボ企画のために厳選した30冊(https://edist.isis.ne.jp/guest/tadoku_meditlab/)が課題本だ。読衆はここから1冊選び、独自に2冊を加えて三冊セットを作り、レコメンドエッセイ三冊屋(500〜600字)を書く。MEdit賞はいったい誰の手に?

 

 太陽の活動が衰えて氷河期が到来したとき、滅びゆく文明の中で男達は生き延びられるのか。
 太古の昔、地球表面が氷で完全に覆われていた事実があった。「スノーボールアース仮説」である。物理学者の田近英一は『凍った地球』を通じて新しい地球史観を語った。地球の気候は地層中に履歴書として残る。全球凍結の状態でも一部の生命が過酷な環境を生き延び、現在の生物種へ進化したのだ。
 ホモ・サピエンス属の男性はイベント型の生物。異界での冒険の後も故郷が必要である。医者の堀江重郎と物理学者の佐治晴夫が『男性復活』の対談で断じた。日常で利己心が強く、劣等感を持つ男性は現実よりも浪漫先立つ。彼らを裏で支える存在がいてこそ快調なのだ。
 遠い将来、地球が全球凍結状態になるとき、人類は地中に潜るか、第二の地球を求めて宇宙へと飛び立つ生活が迫られる。たった一人の男性が地下シェルターや宇宙船に取り残された場合でも、存在にかかわる根源的な要素となる性交、食事、子孫繁栄、死などが技術的に解決される。ジェニー・クリーマンがそのことを『セックスロボットと人造肉』で主張する。命を吹き込まれ、人格をもち、動き、話し、記憶するセックスロボットが性的欲求を満たす。さらに人工子宮を使って単身で自らの遺伝子を次代へと繋げることも可能。再来する氷河期でも男達は生抜き、文明の1ページを地層に加えるのだ。

 

Info


⊕アイキャッチ画像⊕
∈『男性復活』堀江重郎/春秋社
∈『凍った地球』田近英一/新潮社
∈『セックスロボットと人造肉』ジェニー・クリーマン/双葉社

⊕多読ジムSeason13・冬⊕
∈選本テーマ:お医者さんに読ませたい三冊
∈スタジオだんだん(新井陽大冊師)

  • 畑本ヒロノブ

    編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。