何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

自信過剰、自意識過剰など、どこかネガティブなイメージを抱かせる「過剰」という言葉。イシス編集学校で師範や番匠を歴任するマダム・マキコ(若林牧子)はそんなイメージをものともせず、過剰さこそを真骨頂にひた走ってきた。2023年の年の瀬、スペシャルエディットツアーで自慢の料理に腕を振るったマキコのおもてなしぶりを、年始の景気づけにお届けする。
遊刊エディストに刻まれた歴史を辿ると、マキコのおもてなしが初めてフィーチャーされたのは4年前のお正月エディットツアー。前日から仕込んだ食材を持ち込んでぜんざいやお菓子を振る舞い、お正月らしい演出たっぷりに参加者を喜ばせた。2022年の暮れには師範代で音楽家の上杉公志と組み、クリスマススペシャルエディットツアーを初開催。上杉がくり出す華麗なピアノ演奏を料理で盛りあげるべく参加したマキコだったが、勢い余って盛りあげ料理が盛りすぎ料理と言われるほどに大盤振る舞いをしたマキコ。「過剰なおもてなし」がマキコを語るに不可欠の修飾語となる。
そして先月、上杉と組んで2度目のスペシャルエディトツアーを開いた。今年はどんな過剰さが飛び出すのかと思っていると、「最近フランスにかぶれていまして…」と自己紹介をはじめ、なんと、「フランスに1カ月留学していました」と。パリの家庭にホームステイをしてフランス家庭料理の神髄を体感。フランス語学校にも通いフランス漬けの日々を送ったそうだ。(この日のために?)それほどの用意をかさねてくるとは。ここに、過剰さをグレードアップしたマキコ・カジョリーヌが誕生した。
先月のエディットツアー当日、3~4泊の旅行でもするのかと思うほどの大荷物を両手に抱えて世田谷豪徳寺の〈本楼〉に姿を現したマキコ・カジョリーヌ。食材、調味料、食器、調理道具に加え、本楼にはないフライパンも自宅から抱えてきた。音楽家の上杉が自在な演奏で参加者を魅了しながらエディットツアーを進めているあいだ、ひとり黙々と料理をし、休憩時間に食事を振る舞うダンドリだ。1時間ほど過ぎたころ、「そろそろ準備はよろしいですか?」という上杉の問いかけに「あと3分ください!」と応じ、ギリギリまで粘ってついに料理が完成した。それでも「ほんとうはもう1品つくりたかったのだけど…」とまだまだ料理をしたそうな底なしのおもてなしスピリットを見せるマキコであった。
▲「ひとりで大変ですよね」と話しかけると、満面の笑みで「たのしいわ♡」。一瞬にしてマキコファンになった。
ではまいります、マキコが腕によりをかけたクリスマスプレートがこちら!
手前から時計回りに「鶏のレバーペーストのバゲッドのせ」「フリカッセのシュー皮詰め」「キャロットラぺと赤キャベツ、カリフラワーの酢漬けの三色盛り」「タルトタタンもどき」「フロマージュのブルーベリーソースがけ」。真ん中のカップは「マッシュポテトのチップス添え」、奥に見える飲み物は「自家製ジンジャエール」となっている。
ポテトにはクリスマスカラーのパプリカパウダーが振られているが、クミンやナツメグも用意し「味変」の《一種合成》を愉しんでほしいとニコリ。ジンジャエールは高知県の生姜生産者さんから送られてく有機生姜をつかって手作りしたもの。「とっても簡単にできるんです!」と嬉しそうに作り方を説明してくれた。
フリカッセ(fricassée)は「白い煮込み」を意味するフランス定番の家庭料理だそうだが、こちらもひと手間もふた手間もかかっていた。練馬の生産者さんの畑で練馬ダイコンを収穫し、「雪」に《見立て》るために家でひたすら丸くくりぬいて下ごしらえをしたという。それを家から抱えてきたフライパンを使って玉ねぎやきのこやチキンとともに煮込み、生クリームを加えてさらにコトコト。本楼中にいい香りが漂った。
▲コロコロと丸く見えるのが雪に見立てた大根。練馬ダイコンは長いので、皮をむくだけでも大変だったようだ。ちなみに、キャロットラペに使った人参は馬込三寸ニンジンで、練馬ダイコンとともに「江戸東京野菜」として知られる。マキコは野菜ソムリエプロや江戸東京野菜コンシェルジュなども手掛ける「食と農のコーディネーター」として活躍している。
▲料理が運ばれてくると自然と拍手が起こった
これほど手の込んだ料理、そのお味はどうだったのかというと…
「わあ、おいしい~~」
口に運ぶや笑顔になる参加者たち。フランス料理と聞くとなんとなく敷居高く感じるが、本楼で普段着でいただくフランスの味は想像を上回る御馳走だった。
▲(上)おやつにヌガーまで用意。もちろんマキコの手作りだ。中には「柿の種」が隠れていたが、意外や意外、甘じょっぱくてとてもおいしい!(下)スタッフの分まで食事を用意してくれ、おもいがけずおもてなしを受けてしまった。「えっ、こんなにおいしいの!?」スタッフ一同、次から毎年参加しようと心に決めた。
あまりにもおいしく愉しいエディットツアーだが、いまのところ年末だけのスペシャル開催ということになっている。次回の予定は1年後。ただし、マキコに会えるチャンスは意外にもすぐにあるのでお知らせしておこう。
★その1★
2024年1月10日(水)20:00~21:30、今年最初の学校説明会をマキコがナビゲートする。オンラインなので料理は出ないが、世界中どこからでもアクセス可能、参加費も無料だ。イシス編集学校に興味がある方のみならず、マキコ・カジョリーヌに一目会いたい方はぜひお申し込みを。
【無料・オンライン】1/10(水)20時 イシス編集学校 学校説明会を開催します
★その2★
噂ではマキコの料理企画(動画配信?)が今年はじまるとか。いったいどんな内容なのか、どれほど過剰なのか、詳細はまだ謎だ。
***
ちょっとやりすぎで、なにかが過剰で、どこかに傾くカブキ者。出る杭が打たれがちの世の中で、出る杭を怖れぬイシスのカブキ者マキコ・カジョリーヌに、2024年も過剰に注目していきたい。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
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