何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
イシス編集学校ではポリロール――複数の役割を同時進行するのが当たり前とはいえ、師範代登板と会社起業とを同時にやってのけたのは、この男だけではないか。
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。今回は、54[守]たまむしメガネ連教室師範代、松田秀作さんの「覚悟」と「気づき」をお送りします。
■■師範代×起業
会社の起業と[守]師範代の登板。2024年、ふたつの挑戦が同時に始まった。当初、両方を並行して踏み切ることは無謀に思えた。わたしにとってはいずれも未知の世界。ただ、どちらも今を逃してしまえば、その後の人生に引っ掛かりを残してしまうと感じたのだ。
広告業界で15年、人財・組織のコンサルタントとして5年働いてきたが、ここ数年はずっと独立のタイミングをうかがっていた。やりたいことを真っ直ぐやるためには、徐々に会社の枠組みが枷になってきた。
4人の仲間が集まり、2024年初旬に起業する計画を練った。人と組織のあり方を変えたいという想いは同じとはいえ、ともに会社を起こすとなれば、軸となるコンセプトとそれを一瞬で伝える社名やコピーが欲しい。仮にも自分は編集稽古を重ねてきた身。学んできた「型」を活かす時だった。シソーラスを広げ、地を動かし、図を結び、間に表れる関係を探りながら、ビビッとくる言葉が降りてくるのを待っていた。
ちょうどその頃、[花伝所]での稽古が佳境を迎えていた。教室から道場へ。[花伝所]は、[守][破]とはガラリとモードが変わる。足りなさを突きつけられては這い上がる日々だった。
なぜそうまでして師範代を目指すのか。[守][破]の稽古は、お題にひたすら向き合う個人戦。型の理解と回答の質を追求し、研鑽を重ねてきたつもりだった。しかし、教室をつくることに対しては、なんら意識してこなかった。仮にも人と組織の変革を目指して起業しようというのに、教室という「場を編集する」ことを実践せずして、編集を語ることなんてできない。そう思ったのだ。
[花伝所]の最終課題は、『千夜千冊エディション 情報生命』を読み解き、図解すること。そこで目に止まったのが、「ゆらぎ」と「創発」だった。言葉が降りてきた感覚があった。
社名は「YURAGI DESIGN」に決まった。変化はゆらぎから始まる。今の”あたりまえ”にゆらぎを起こす。そのために、学びのあり方を変える。偶発性、不確実性を味方につける。そして、個の中で起きたゆらぎを相互に交わすことで、総和を超えた創発が起こる組織をデザインする。これを事業の軸に据えた。なんだ、編集学校でやっていることと同じじゃないか。
▲株式会社YURAGI DESIGNがめざすのは、今のあたりまえに“ゆらぎ”を起こし、新しい意味や価値を創発することだ。
2024年10月、54[守]が開講し師範代としてデビューした。自分は、学衆にゆらぎを起こす一滴を投じることができるだろうか。編集によって、ものの見方や考え方が変わったと感じてもらえるだろうか。指南文を何度も見直しながら、念じるように送信ボタンを押した。やがて稽古を重ねるにつれて、それは奢りかもしれないと気づいた。相手を動かそうと考えれば、言葉に力みが籠る。それは相手に伝わり、場が居着いてしまう。ここにはすでにお題がある。お題がゆらぎを起こし、場を方向づけてくれる。自分はそこに表れる反応を面白がって、掬い上げればいい。学衆たちは多様な個性を持ち寄り、相互に影響しあいながら場を創っていった。教室は勝手に育っていった。
こうして2025年が明け、2月9日に卒門を迎えた。会社は一期目を終え、比較的順調に軌道に乗せることができた。YURAGIのコンセプトは、まわりにすこぶる評判がいい。みんなどこかで今に息詰まりを感じ、それをゆるがせる「何か」を待っているのかもしれない。起業体験と師範代体験という2本の線が、絡みあいながらインタースコアしたからこそ、出会えた偶然や生まれた発見があった。来年は50歳を迎える。ここからまた、何本もの線がゆらぎながら先へと伸びていき、新しい結び目を創っていくだろう。
文・写真/松田秀作(50[守]みちのく吉里吉里教室、50[破]ダルマ・マントラ教室)
編集/大濱朋子、角山祥道
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2025-10-02
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