49[破]に起きた偶然

2022/12/21(水)08:05
img CASTedit

世界は偶然に満ちている。

 

アメリカ作家オースターの持論であり、「偶然」を好んで小説に取り入れてきた。それが人気の一因となる一方、偶然はそうそう起きるものではないという批判もある。そんなオースターが意を強くする事件が、49[破]で起きた。

 

事の顛末はこうだ。

 

藍染発する教室の師範代として49[破]に登板する古谷奈々は、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンをもつ中川政七商店に務めている。その古谷が11月初旬、visionsというサイトのライター2人から取材を受けた。Zoomでの取材が始まるや否や、ライターのひとりから「私はあなたを知っている」と告げられる。きょとんとする古谷に、もうひとりのライターが、自分は49[破]の学衆であると明かしたのだ。

 

前者はかつてイシス編集学校の学衆、いまは感門団で活躍する内村寿之、後者は縞状アンサンブル教室の学衆、鳥本菜々美である。「自分らしい社会への役立ち方」をテーマに取材をし情報を発信するvisionsと、日本工芸の活性化に取り組む中川政七商店と、双方のビジョンが共鳴した結果、古谷の取材へとつながったのである。

 

「インタビュー編集術みたいなインタビューを受けました。いや、ビックリした」

 

取材後、学衆・鳥本が聞き手だったことに古谷は驚きつつ、あらかじめ絞られたテーマについて多様な角度から質問を重ね話を引き出す鳥本の手際を[破]の編集稽古にたとえた。

 

インタビューの中で古谷は、「私たちが届けることによって、それが100年後も残る」と、工芸復活に取り組む自社の仕事を誇る。たまたま巡り合った人とモノ、人と人との出会いによって後世に残りつづけるものがある。

 

そう、世界は偶然に満ちているのだ。

 

 

▼49[破]学衆が49[破]師範代に取材したインタビュー編集

◎これからの生き方学/古谷奈々さん

積み上げたキャリアを手放したときに見つかった、自分にとって大事な価値観

  • 白川雅敏

    編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。