45[破]師範・野嶋真帆の描くジャコメッティのプロフィール

2020/10/09(金)16:24
img CASTedit

 「ここに、ジャコメッティを描いてくれませんか」


 吉村堅樹林頭のオーダーに応え、野嶋師範が筆ならぬチョークをとった。学林堂の黒板に、すらすらと鼻の高い男の横顔が描き出される。

 

 10月3日(土)45[破]伝習座が始まる1時間前のこと、[破]の師範たちは、すでに準備も打ち合わせも終えたところだ。野嶋はこの日、文体編集術のレクチャーを担う。千夜千冊500夜アルベルト・ジャコメッティ『エクリ』を題材に、そこにあらわれている文体編集術をあらわしてゆこうという試みである。先日の20周年感門之盟で、太田香保総匠が「エクリあたりから、何かを引き受ける松岡校長の覚悟が見えてきた」と明かされた、あの『エクリ』だ。

 

 レクチャーのステージは、学林堂の黒板前と決まった。そこに向けて、スポット照明も用意された。デザイナーの野嶋に何か描かせようという林頭の目論見で、黒板はきれいに拭きあげられている。

 

 「おお、ジャコメッティだ!」「そっくり!」「さすが、ノッジー師範」の声のなか、カリカリとチョークは動き、独特の細長い人のフィギュールが並ぶ。450ページの本『エクリ』が横に置かれ、舞台装置が整った。

 

 編集術BPTのP、プロフィールには「横顔」という意味もある。自ら描いたジャコメッティのプロフィールに見守られ、野嶋はイメージとメッセージの間にある切実に向けて、出遊する。

 

チョークを走らす野嶋師範。

「もうちょっと脚長い」という校長の声も。

撮影:福田容子師範

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。