何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

司会者インタビューで対話を重ねるほどに、石黒番匠の編集の源とも言える怒りに触れている気持ちになる。この人の怒りは、「方法を身につけたなら、そんなところに留まっていてはいけないはずだ」という相手と編集への深い期待から生まれている。こういう人に叱られたい。
第89回感門之盟の総合司会を務める石黒番匠。「遊撃ブックウェア」のテーマを受けて、感門之盟をリスクに対する勇気を育む場にしたいという。これは1427夜 『王羲之 六朝貴族の世界』の「読書とは、突如として訪れる危難(リスク)に対する勇気を育むことなのだ」という一節を引用してのことだ。
守講座運営においても、リスクを恐れず不足を提示することを自ら引き受けている。
私は厳しいことや他の人が言いにくいことも言っていく。師範代や師範がそつなくこなしてしまうこともあるが、それだと縮小再生産だ。無理やりにでも不足を見つけ、先んじて取っていかないといけない。でないと編集は始まっていかない。
人に対して、イシスに対して期待がある。松岡校長が信じていたイシスの可能性に突き進んでいきたい。だから当たり前のように「何がなんでも不足を作っていく」と語る。感門之盟でも編集を生むための不足の提示を恐れない。
「私はイリンクスの人なのです」とも教えてくれた。イリンクスとは意識を官能的な眩暈状態に導き、忘我へと誘うものである。今もディスコに通い、テクノミュージックを愛好し野田努と電気グルーヴを先達として仰ぐという。テクノは同じフレーズが微妙にずれながら繰り返され、聴く者をトランス状態へと導く音楽だ。
石黒番匠はこのイリンクスを「先に別世界を現実化してしまう方法」として総合司会でも軸にしたいという。不足の先取りは、別世界を先行させる方法になる。
ホームレスの支援を行うNPOにも所属する石黒番匠は「こんな社会でよいのか」と様々感じることが多い。ただし、社会に対して反論やアンチテーゼを掲げたいというわけではない。主題ではなく方法で立ち向かいたい。マハトマ・ガンジーの言葉に「あなたが世界に見たいと願う変化に、あなた自身がなりなさい」があるが、自分自身が変容し、場を作っていくことを大切にしている。方法によって自分が変わり、別世界を創ることができる。それによって、社会変革にも手が届く。感門之盟では「イシスは社会変革の場だ」と堂々と言いたいという。この堂々と言い切るということが石黒番匠の遊撃ブックウェアであり、別世界化であり、編集は不足から始まるの第一歩なのだ。
中村 麻人中村麻人
編集的先達:クロード・シャノン。根っからの数理派で、大学時代に師範代登板。早くから将来を嘱望されていた麻人。先輩師範たちに反骨精神を抱いていた若僧時代を卒業し、いまやISIS花伝所の花目付に。データサイエンティストとしての仕事の傍ら、新たな稽古開発にも取り組み毎期お題を書き下ろしている。
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コメント
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2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
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作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
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2025-09-24
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