♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
川邊透
2025-09-30 21:55:24

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
[守]学衆・板垣美玲のプロレス好きは、回答からダダモレしていた。〈ことわざ〉を擬く稽古では「孫にドロップキック」。〈見立て〉の稽古では、ポール型ハンガーラックを「怪獣」に見立てて、ディスティーノ(内藤哲也選手の技)を繰り出した。〈モード文体〉の稽古にいたっては、勝手に「番外編」としてプロレス実況中継を試みた。
そんなプロレス好き、内藤哲也好きの板垣は、今期、56[守]に師範代として登板する。プロレス×編集のバックドロップをいざ。
■■プロレスの編集的観戦法
初めてプロレスを見に行った。7年前のことだ。プロレスを毛嫌いする私に「プロレスは演劇なんだよ」と繰り返し説明する夫の熱心さにほだされ、文字通り「だまされたと思って」の観戦だった。そしてまんまと、命をかけたエンターテイメントに心を鷲掴みにされた。
最初は自己表現が上手く、メディア露出も頻繁な「100年に1人の逸材」棚橋弘至選手に惹かれたが、会場では内藤哲也選手がダントツの人気だった。それは、ファンが身に付けているグッズの多さで一目瞭然。「制御不能のカリスマ」内藤選手は対戦相手に唾を吐き、おちょくるような戦法。どうにも魅力がわからない。
帰宅後、プロレスのことをもっと知りたくなって、新日本プロレスの動画配信コンテンツを契約した。内藤選手のお勧め動画に挙がっていた「IWGPヘビー級王座決定戦」(vsオカダカズチカ、2016年4月)の映像を見て天地が逆転した。内藤選手の入場に観客が歓喜し、実況アナウンサーの声がうわずる。「夢を語らなくなった内藤にファンが夢を見始めている!」。それからはあれよあれよという間に内藤選手のとりこになった。
▲板垣さんの内藤選手応援グッズ。
今回、43期[花伝所]の指南演習の際、お題を出題する際のマクラで、プロレスをからめるというチャレンジを試みた。内藤選手の見方が変わった上記の一戦は、〈026番:ルール・ロール・ツール〉(ルル三条)の模擬出題でこんなマクラにしてみた。
編集学校にいるとよく耳にするルル三条。師範代が好きなプロレスも、ルール(スリーカウント、反則、制限時間など)・ロール(レフリー、ベビーフェイス、ヒールなど)・ツール(ゴング、リング、コスチュームなど)のルル三条を決め込むほど、試合内容が充実して楽しくなります。師範代の推し内藤哲也選手は、自ら観客が望む方向にルールを変えることで、ブーイングから歓声を浴びる人気レスラーに上り詰めました。
内藤選手のこの変化は、ベース(B)からターゲット(T)に向かっていく途中(P:プロフィール)を描く方法〈BPT〉でも説明できる。内藤選手はプロレスラーとしてのベース(B)を「夢はIWGPのベルトを獲ること」から「自分自身のプロレスを楽しむこと」に変えたことで、ターゲット(T)が「オカダカズチカを倒すこと」から「オカダカズチカとのプロレスを楽しむこと」になり、プロフィール(P)が「相手を徴発する。絶対勝つとアピールする。……など」から「オカダカズチカのプロレスを研究し、楽しめる展開にする。相手を煽っておもしろくする。……など」に変わった。見ている観客がどちらに心惹かれるかは容易に想像できるだろう。そして、型によって内藤選手の魅力がまたひとつわかったことに、私はひとり悦に入るのであった。
▲新日本プロレス公式チャンネルより「内藤哲也選手のデスティーノ30連発」
現在、全お題のマクラでプロレスにからめた一言を添えることを目標に、56[守]師範代登壇に向けて準備に励んでいる。
文・写真/板垣美玲(53[守]金継ゲシュタルト教室、53[破]なんでもデコトラ教室)
編集/チーム渦(角山祥道)
■板垣美玲師範代が登板する56[守]、絶賛募集中■
第56期[守]基本コース
【稽古期間】2025年10月27日(月)~2026年2月8日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/syu)から。
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2025-09-30 21:55:24
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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2025-10-02
何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。