うま味を引き出すミソは師範代―54[守]創守座・フライヤー語り―

2024/10/26(土)11:54
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たまむしメガネ連教室・松田秀作師範代は、黒から緑を帯びたメガネにかけ換え、半解マイカ教室・登田信枝師範代は、占い師のような装いで石を半分に割った。半音タトゥー教室・榎田智子師範代は、その日おろしたばかりのズボンにできた創を見せ、モウソウ縁子さん教室・小林美穂師範代は、手にした灰色の日常世界の写真を破った。

 

左上:半解マイカ教室・登田信枝師範代、左下:モウソウ縁子さん教室・小林美穂師範代、右:半音タトゥー教室・榎田智子師範代

 

これは2024年10月5日に行われた、創守座での風景である。
54[守]の師範代たちは自身が作成したフライヤーを手に、15週間の編集稽古を通して出会う世界について全身で語った。A4の紙に収まりきらなかった想いを、つまみ食いしてみる。

 

■たまむしメガネ連教室・松田秀作師範代

手にしたのは編集の型を通して、世界の見方を変幻自彩に見ることができるメガネ。これを手渡し、日常で使ってもらうことが自分の使命だと宣言する。

 

■中ゴシABC教室・上原正行師範代

「中」とは新しいものも古いものも、つるつるもケバケバも、漢字もカナもアルファベットもある状態。中腰になって目線をずらし、この姿勢は探し続ける態勢だと話す。

 

■カタコト黄表紙教室・細井あや師範代

様々な木の色や風合いを活かし、組み合わせて作られる寄木細工の小箱。それを[守]での経験と重ねる。中に入っているのは、それぞれが持つ曖昧な感覚だと言うと、手にした小箱を揺さぶった。

 

■チリモンどんたく教室・小湊倫子師範代

オンライン参加であった小湊師範代。画面から飛び出るくらいの勢いでお囃子をうたいおどり全身で編集の面白さ表すと、自分の中にある可能性を秘めたモンスターを表象させようと、笑顔で伝えた。

 

 

左上:たまむしメガネ連教室・松田秀作師範代、左下:チリモンどんたく教室・小湊倫子師範代、右上:中ゴシABC教室・上原正行師範代、右下:カタコト黄表紙教室・細井あや師範代

 

創守座のちょうど一週間前、本楼では津田一郎氏による「カオス理論と物語編集」の講義があった。津田氏の語りによって、アルマスキャビアのような存在だったカオス理論が、いくらの醤油漬けくらい、距離が近づくように感じた。同じ場に立ち、語った54[守]師範代たち。彼らの語りもまた、編集なんて関係ないと思う人を、引き寄せる力があった。師範代が加わることによって、引き出されるうま味。彼らと共に味わう54[守]が間もなく始まる。

 

文・アイキャッチ/中村裕美(54[守]師範)
写真/阿久津健(54[守]師範)・北條玲子(54[守]師範)

 


◆イシス編集学校 第54期[守]◆
稽古期間:2024年10月28日(月)~2025年2月9日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu

  • イシス編集学校 [守]チーム

    編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。

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コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。