何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

近過去はぼやけて見えるという。あまりにも近くにあるものにはピントが合いづらいように、時代を振り返る行為においても同じことが言えるようだ。令和を迎えて、昭和という時代がさらに色濃く見える一方、平成はどうだろうか?どこかぼんやりして見えているのではないだろうか?
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4月7日に本楼で開催したエディットツアー特別編は、ナビゲーターに編集工学研究所の橋本英人が立ち『情報の歴史21(情歴)』を用いて、イシス式クロニクル編集ワークを行いました。中高で歴史を教えてきた師範バニー蔵之助(バニー師範)が強力なサポーターとして、企画から立ち合います。実は『情歴』を使ったエディットツアーは今回初めて。バニー師範の「近過去はぼやけて見える」という一言から、「平成」をテーマにすることがするすると決まり、橋本がそこから一気にワークに仕立てていきました。
初めての『情歴』エディットツアー、当日の様子をフォトレポートでお届けします。
本楼では平成コーナーが参加者をお出迎え。3.11からフェイスブックまで、平成っぽい書籍が並ぶ。手前には2000年版のゴジラフィギュアやNintendo DS、ガラケーなどスタッフが持ち寄った平成グッズも顔を揃える。
参加者も揃い、3時間のワークショップがはじまる。まずは基本的な編集ワークでウォームアップ。普段、自分がどういう風に発想をしているか意識をしていないもの。アタマの中で無意識に行なっている《編集》を取り出すために、この日は「地と図」「見立て」などの編集ワークを高速で行う。短いワークでもワークシートに書き出すと自分の思考癖が見えてくる。
ウォームアップを終えたらいよいよ『情歴』を手に、平成へダイブ。まずは、平成31年間における自分史を振り返ってみる。嬉しかったことや残念だったことなど、31年を限られた時間の中でできるだけ書き出す。阪神大震災、大学受験、WWWの到来…それぞれの平成自分史が徐々にカタチを帯びてくる。
さて、平成とはどういう時代だったのか?約10年ごとに3つに区切るとその特徴が見えてくる。
◎阪神・淡路大震災やオウム事件があった前半10年
◎フェイスブックやアラブの春が起こった中盤10年
◎東日本大震災や英国EU離脱のあった後半10年
2つの大震災に挟まれた平成。その間にインターネットが登場し、人と人を繋げ、また分断を起こしているという大きな時代の流れが掴めてくる。ぼんやりと見えていた近過去も、改めて歴象を追ってみると平成という顔が見えてくるようだ。
次は自分にとって転換期だった1年をキーイヤーとして選んでみる。橋本は、自身がアメリカ留学した2008年が転換期だったという。”対称性の破れ”をキーワードに3つの歴象をピックアップ。参加者も真摯に耳を傾けながら平成のキーイヤーを思い浮かべていく。
ここからは、いよいよ『情歴』を手に自分のキーイヤーを読んでみる。あの一年、国内外では何が起こっていたのか?自身に起こったことと重ねながら、伏せられていた歴史を展いていく。
「あ!友達が載っている!」一人の参加者が思わず声をあげた。『情歴』で学生時代の友達の名前を発見したらしい。あれだけの情報量である。ページを開けば思わぬ出会いが詰まっている。
そして、最後のアウトプットに向かって4つのグループに分かれてワーク。それぞれの平成自分史を持ち寄りながら、自分たちの平成にキャッチコピーをつけてみる。自分史だけではない、他者の歴史を重ねてみることがイシス式クロニクル編集ならではある。異なる歴史を重ねてみることで、新たな見方を差し込んでいく。出来上がった4つのキャッチコピーはこんな感じだ。
「混沌は爆発だ! ーマイナスもプラスも」
「表と裏があぶり出る ーオウムオレオレゲノム」
「ガレージ(ゲリラ)からビジネス ー技術と起爆の戦い」
「ネットワーク上げ下げ ー明るさと暗さ 正負、悪意も伝わる」
正負、表裏、明暗、善悪・・・平成における対称性、二項対立に注目したグループが多かったよう。自分史から『情報の歴史21』、そして今日はじめて会った方の平成史、これまで交わることのなかった歴史を掛け合わせることで新しい関係性を発見できることがクロニクル編集ワークの醍醐味である。ぼやけて見えた平成の近過去も参加者11名の歴史が重なったことで朧げにその輪郭が見えてきた。今回は二項対立的な平成の顔が現れてきたが、掛け合わせる歴史によって様相は如何様にも変幻してくる。例えば、メディア史やファッション史だったら?例えば、科学技術史や美術史だったら?ときには『情歴』やあらゆる書籍を片手に自分史と○○史を重ねてみると一様に見えたクロニクルに別の顔が見えてくることだろう。
教育機関及び23歳以下の学生・生徒向けに、期間・部数限定(9月末まで500部限定)で申込受付しています。
『情報の歴史21』アカデミックセット発売決定!(教育機関及び学生・生徒向け)
ともに、編集工学研究所のウェブショップにてお求めいただけます。
▶︎『情報の歴史21』書籍版 ご購入ページ
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後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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2025-10-02
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