何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

春になると花を咲かせる宿根草は、寒い冬の間は地中に根を張り、その時を待ちわびている。
1月20日に行われた第40期ISIS花伝所「敢談儀」の最後のプログラムは「黒潮縁座」。この場では、放伝生21名が敢談儀の中で受け取ったこと、そのなかで見えてきた自分の編集道を花伝所の指導陣、オブザーブの各講座の学匠、師範たちと交わし合う。
入伝生は師範代になるため、師範からもらう問いに自分なりの感で応じ、答を返していく。自分の中に今までになかった新しい価値や意味を取り込んでいく、編集学校において「問感応答返」と呼ばれるこのプロセスは、時に痛みをともない創をつくる。黒潮縁座は、花伝所で幾度となく繰り返されたこの問答の最後の場となる。
冒頭、中村麻人花目付から「“自分”に戻らず、師範代として言葉を発するように」というメッセージが放たれた。全員が車座となって交わし合う場は、このひと言で一段と空気が引き締まった。
「不足や不安があるからこそ想像力が高まる機会になる。この場に不足や不安を持ち出さない」中村・林両花目付の言葉に放伝生の居住まいが正される。
ブビンガを囲んで、噛みしめように言葉を発する放伝生、Zoomの向こうの放伝生に、指導陣も重ねていく。
(放伝生)
―用意してきた言葉ではなくその場で出てきた言葉を大事にしたい。
(放伝生)
―問感応答返は短いスパンだけでなく、長いものもあることを知った。
(梅澤光由師範)
―言い淀む、立ち尽くす、語りたいのに語れないことはむしろ歓迎すべきこと。書けなかったことの方が書けたことの何倍も大事。
予定調和ではない言葉は切実で、時間が経って現れることもある。
突破の日から半年。堂々と編集道を語る「元」破学衆は、すっかり師範代の顔になっていた。
(放伝生)
―ISISは個を大切にするが教室は崩壊しない。それが普通の組織と違う。
(放伝生)
―教室の中で時に起こる“事件”も、見方が変われば意味が変わる。
(田中晶子所長)
―体験することをおそれない。事件というのはこの中だけではなく、世の中全てが事件だらけ。だけどその中から自己が生まれる。編集学校の中で次々起こる事件を体験してほしい。
「事件」は、振り返ればその教室だけのプロフィールになる。
(放伝生)
―場の力というものを今日あらためて感じた。
(林朝恵花目付)
―教室という場でしか作り得ない関係の中で「自己」ができる。編集学校は、編集状態にある自己が次々生まれる場で、一つにおさまることはない。
敢談儀という「場」に、教室という「場」が重なっていく。
黒潮縁座のさいごに、吉村林頭が放伝生に語りかける。
―不安とは「感」で不足は「応」。不足には二つあって、一つは技法や芸当が足りない不足。そこは磨く、手を抜かない。もう一つは生きづらいという不足。それは情報を見る目があるからで、武器になり得る。
自分の「不足」から、師範代になることに「不安」を感じていた放伝生たちは、黒潮縁座という場の交わし合いのなかで、だからこそ師範代になる意味を受け取った。編集学校では師範代は誰しもフラジャイルな存在であり、そこが世の中にある学校と決定的に違う点なのだ。師範代にフラジリティと多様さがあるからこそ、編集学校という仕組みがいきいきと動き続けられる。
――やりきれない想い、分からないことをそのまま抱えて生きていくことが、私たちの認識力や表現力を豊かにすることができる――
1787夜 『ネガティブ・ケイパビリティ』
「不足があるということが師範代になる理由になる」
交わし合いの中で一人の放伝生が言った。
土田は「不足があるからこそみんなで進みたい」と言葉を紡いだ。
不足は「ゆらぎ」となり、だからこそ学衆と師範代の間で相互編集が起こり、変化し続けることができる。放伝生は世界で一つだけの教室名をもらい、その教室でしか起こりえないことにゆらぎながら師範代に「なって」ゆく。
新緑まぶしい季節に53守師範代としてデビューする放伝生たち。その日に向けて、冷たい雪の下で息をひそめる植物のように、用意を尽くし登板のときを待つ。
写真/後藤由加里
森川絢子
編集的先達:花森安治。3年間毎年200人近くの面接をこなす国内金融機関の人事レディ。母と師範と三足の草鞋を履く。編集稽古では肝っ玉と熱い闘志をもつ反面、大多数の前では意外と緊張して真っ白になる一面あり。花伝所代表メッセージでの完全忘却は伝説。
山下雅弘師範代は、生粋のメディア人である。 30年を超える新聞記者としての経験を武器に、50[守][破]師範代を全うした山下は、今期「百禁タイムズ教室」という教室名を引っさげ、再登板に挑んだ。一日1つ禁を破 […]
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2025-10-02
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