◎速報◎充ちて、破れて、先に出る【39[花]・敢談儀】

2023/07/29(土)23:40
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井上尚弥がフルトンにTKO勝ちしたニュースに沸いたこの1週間。試合後に勝利のポイントを尋ねられた井上は、身長、リーチではフルトンが圧倒的に有利だが、自分がペースを取るために距離感を掴むことを徹底する、そのためのトレーニングをしていたと語った。厳しいトレーニングを積み重ねて大柄なフルトンに挑んだ井上のように、大きなターゲットに向かって稽古を積んできた人々がイシスにはいる。

 

5月の入伝式後、師範代養成コース・ISIS花伝所の入伝生たちは5Mの式目演習、錬成、キャンプと怒濤の稽古に身を投じてきた。それらを越えての今日、敢談儀は花伝所の最後のプログラムである。その名の通り、敢えて談(かた)る場だ。だが花伝所所長・田中晶子の姿が見えない。実はすこし前に交通事故に遭い、眼窩底骨折をして手術をしたばかりだった。しかしここまでの入伝生の奮闘を見守ってきた田中所長は、術後の身をおしてZoomの向こうから入伝生たちに言葉を贈った。

 

これまでの稽古で師範から多くの指導や指南を受け、自分の編集のクセ、思考のクセに自信を無くしそうになった人もいるかもしれない。けれど、好みやフェチや憧れや不足といった「フィルター」こそが編集契機になる。

 

さらに積極的なモードチェンジや編集的自己の更新も促した。

 

遺伝的自己、免疫的自己、血液型的自己、国や地域に属しているわたし、学校・会社・家庭に属しているわたしなど、いろいろなわたしがいる。面白かったことも辛かったことも含め、さまざまな記憶をもつわたしもいる。それらをすべて使って編集に向かっていけるように「たくさんのわたし」を見つけることが[守]の稽古の基本にあるが、師範代こそ、その方法を積極的に使ってほしい。

 

39[花]がはじまって間もない頃、ある入伝生が39[花]を「咲く花」と呼びはじめたという。校長松岡正剛の著書『花鳥風月の科学』には、こんな一節がある。

 

サキは、「先」「崎」「柵」「裂く」「割く」「咲く」「坂」「酒」などいろいろな言葉をつくっています。エネルギーがいっぱいになり、これ以上は先に進めない状態がサキなのです。先も崎も柵もそういうイメージをあらわしている。坂はこれ以上昇ろうとするとギリギリになるというイメージですし、酒はこれ以上飲むとおかしくなるギリギリの気分を示している言葉です。「咲く」という現象もつぼみがこれ以上はじっとしていられない状態のことです。エネルギーが充満し、それが破れて先に出る――それが「咲く」ということです。

 

充ちて破れた先には「師範代」というイシスでしか成し得ない世界編集の場が待っている。9月の感門之盟で、新師範代たちにどんな教室名が贈られるのだろうか。

 

 

アイキャッチ撮影:後藤由加里

  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。