何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学にまつわるコトバ・カラダ・ココロワーク」で作成したブックリストから今回のコラボ企画のために厳選した30冊が課題本だ。読衆はここから1冊選び、独自に2冊を加えて三冊セットを作り、レコメンドエッセイ三冊屋(500〜600字)を書く。MEdit賞はいったい誰の手に?
42歳にして多発転移がんを抱える哲学者は、主治医に「『急に具合が悪くなる』かもしれません」とホスピス探しを勧められる。同世代の人類学者とのおしゃべりや往復書簡は偶然性や負を語る方法の探究となる。「私」が運悪く病気になったのではなく、病気という偶然によって作られたのが「私」だということを見出し、生の側にとどまる気力を取り戻す。
病や老い。変化していく体に人は戸惑い、焦る。美学者の伊藤亜紗が、手足の切断や認知症などの激烈な変化を体験した人に、体の「使い方」に焦点を当ててインタビューしたのが『記憶する体』である。12人の事例から、多様な身体のローカル・ルールを作るのは、蓄積された時間=記憶であることが浮かび上がる。痛みや欠損を対象化することが、新たな体の使い方の発明につながる。
自閉症スペクトラム症をニューロダイバーシティという概念で捉えなおすのが『自閉症という知性』だ。こちらもインタビューという方法で、一見「ヘンで奇妙」な行動が、ユニークな感じ方と固有の記憶から編み出されたルールの束であることが見えてくる。
語り手たちが「不便ではあるけれど不幸ではない」のは、会話する相手や方法、場を持っているから。そうでない人にとって医師は命綱になる。「先生、一緒に考えてくださいませんか」から始まる会話ができる余地、余白が、薬のきかない痛みを和らげること、知ってほしい。
Info
⊕アイキャッチ画像⊕
∈『記憶する体』伊藤亜紗/春秋社
∈『急に具合が悪くなる』宮野真生子・磯野真穂 著/晶文社
∈『自閉症という知性』池上英子/NHK出版新書
⊕多読ジムSeason13・冬⊕
∈選本テーマ:お医者さんに読ませたい三冊
∈スタジオ*スダジイ(大塚宏冊師)
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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コメント
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2025-10-02
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作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
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