何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

本楼にて「ミメロギアワセ」が開催された。7月3日日曜日のことである。
「ミメロギアワセ」とは、「ミメロギア」と「アワセ(合わせ)」を一種合成した造語。ミメロギアは、一対の言葉のイメージを、連想力を膨らませて対比を際立てて遊ぶエディトリアル・ゲームだ。[守]の名物お題であり、同朋衆と呼ばれる評者から多様多彩な評価を受ける番選ボードレール(番ボー)の対象お題ともなっている。
もう一方の「アワセ」は日本の方法のひとつ。日本は『古事記』の昔から、二つのものを合わせる「アワセ」、合わせたものを揃える「ソロイ」、そこに比較をおこす「キソイ」を重視してきた。松岡校長によれば、歌合わせや貝合わせなどの遊びに見られるこれらが方法日本の秘密なのだと言う。
方法日本を遊ぶこの「ミメロギアワセ」を仕組んだのは、男装いとをかし教室の野住智惠子師範代と忖度しないわ教室の相部礼子師範代である。両教室の合同汁講のために、ルル3条、ダンドリダントツを駆使して考案したのだ。その思いに応えるかのように、日夜編集稽古をともにする師範代と学衆が初めて顔を合わせる特別な場に、本楼には大阪から駆けつける者を筆頭に5名、オンラインにはスイスからの参加者をはじめ5名、計10名が顔をそろえた。
日本の方法に肖った「ミメロギアワセ」のルールはこうだ。まず学衆が「方人(かたうど)」と呼ばれる作者となり、たくさんのミメロギアを作る。お題は、別院企画の「七夕対句:浴衣・花火」だ。時間がきたところで学衆は自薦作を師範代へ。野住・相部両師範代が提出された作品を吟味してソロイをつくり、五番勝負に仕立て上げる。最後は、2教室を混交させてキソイのステージへ。方人の名はフセたまま、「念人(おもいびと)」と呼ばれる評者が任命された作品を褒めちぎる、というルールだ。
一番勝負を例にすれば、【左】組の「頬が染まる浴衣・空が染まる花火」を、方人をフセたまま、念人の阿部さんが称賛し、【右】組とキソイ合う、というものである。では、念人になったつもりでご賞味あれ。
※[D]=男装いとをかし教室/[S]=忖度しないわ教室
●一番
【左】頬が染まる浴衣・空が染まる花火
(方人:分道佳苗さん[D] 念人:阿部紳作さん[D])
【右】涼風一陣の浴衣・百花繚乱の花火
(方人:阿部紳作さん[D] 念人:大澤実紀さん[S])
●二番
【左】着せる浴衣・付ける花火
(方人:岩渕美帆さん[D] 念人:上田隆統志さん[D])
【右】纏う浴衣・放つ花火
(方人:横山一樹さん[D] 念人:椿和恵さん[S])
●三番
【左】当たるとドキッとなる浴衣・当たるとアツッとなる花火
(方人:杉山誠一郎さん[S] 念人:横山一樹さん[D])
【右】ハッとする浴衣・ドーンと花火
(方人:大澤実紀さん[S] 念人:鳥本菜々美さん[S])
●四番
【左】デートで浴衣・デイサービスの花火
(方人:椿和恵さん[S] 念人:岩渕美帆さん[D])
【右】月明かりの浴衣・夜道を照らす花火
(方人:上田隆統志さん[D] 念人:木佐陽さん[S])
●五番
【左】触れる浴衣・届かぬ花火
(方人:鳥本菜々美さん[S] 念人:分道佳苗さん[D])
【右】はだける浴衣・ほとびる花火
(方人:木佐陽さん[S] 念人:杉山誠一郎さん[S])
二番【左】の上田念人は、「『着る』ではなく『着せる』としたことで、続く『付ける花火』が親に送り出された子どもたちを想起させる」と読み解き場を唸らせ、現役大学生の杉山方人の三番【左】に対し、横山念人は甘酸っぱい過去を連想し場を沸かせた。念人としてミメロギアを読み解く様は、まるで学衆の方法をリバースエンジニアリングして指南を届ける師範代そのもの。方人から念人に着替えることで、学衆たちはミメロギアの要諦の一端に手を触れたようである。
汁講から1週間、番ボー締め切りの後、集まったエントリー作品を目にした両師範代はこうつぶやいた。
「ひいき目抜きに、素敵な作品が並びました」(@野住師範代)
「最後のみなさん自身の追い込みでほれぼれする作品が並びました」(@相部師範代)
教室でのミメロギアの番稽古、そして、49[守]の祭典である番ボーをとことん楽しんでもらいたい。そんな思いから、師範代が編集術を駆使して学衆に仕掛けた方法日本肖りのエディトリアル・ワーク。アワセ・ソロイ・キソイの遊びが奏功したかどうか、もはや同朋衆の講評を待つまでもない。
白川雅敏
編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。
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コメント
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2025-10-02
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