〈突破者が書く!第7弾〉世界歴史奥義伝から世界読書奥義伝へ【78感門】(松林昌平)

2022/04/02(土)21:00
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 感門之盟が始まり、REMIXとは何だろう?と皆が思っている時、松岡校長が壇上に静かに上がる。少し痩せられたように感じる。体調は大丈夫だろうか?ずっと待ちわびた言葉が厳かに語られ始めると、私の懸念は払拭された。

 

ISISとは楽しみながらREMIXする述語である
 感門之盟は黒膜衆・裏方・感門団によって運営され、皆がポリロールを担いロールがREMIXされている。利潤はないらしい。そこまでして皆が集まるのは、編集学校が痛快だからにちがいない。

 

世界歴史奥義伝
 校長はウクライナ問題に触れ、世界史が失われていることを嘆く。世界史はいわゆる4大文明の地で動いているのではなく、もともと紅海・黒海・ベンガル湾に囲まれた地域を中心に回っている。その事実が忘れられ、アメリカ・EU・ソ連に好き勝手にされている。
 また今回COVID19により我々がウィルスと共に暮らしていることが再認識された。カミュの「ペスト」等で我々は知っていたはずなのに。ズーノーシスの世界史が失われている。21世紀は微生物から生物史中心に回るだろう。今こそ世界史と生物史を結びつけなければならない。そこに編集技法が必要で、REMIXが大事である。

 

マラルメの骰子を振る 

編集技法にカットアップがある。様々な情報を一旦バラバラにし、再度編集する。そこに偶然性を入り込ませる。それがマラルメの骰子を振るということである。これがREMIXなのだと強調した。聴衆に静かな熱気が伝わっていく。

 

世界史を再魔術化
 最近のメディアからは色々な情報が溢れ落ちている。昔フランスのカタログで全ての分類を傘を用いて行なっていた。哲学や思想等さまざまなジャンルをこのように集めて、分けて、仕組んで、伝えても良いのでは?と問いかける。こういう編集の為に[守]の38のお題があるのだ。情報は単に拡散するだけではダメで、組み合わせてアソシエイトしないといけない。失われた世界史を取り戻すために、伝達の不可能性を超えて表象することだ。世界史を再魔術化するのだ!

 

いざ世界読書奥義伝へ
 今回感門之盟で体験したことをそのままにしないでremindしないといけない。校長は最後に、そう強調された。想起して編集することの大切さを述べている。松岡校長の思いが伝わってきた。コロナや戦争で世界・日本・人々が分断されてしまった。私は世界に散らばる切実をremindし、編集の力で繋ぎ合わせていこうと考えている。「離」に進む決心がついた。

▲自宅の本棚のワンショット。真っ赤な千夜千冊全集や、千夜千冊エディション、大澤真幸氏による『〈世界史〉の哲学』が積まれている。

 

文:松林昌平(47[破]泉カミーノ教室)

編集:師範代 山口イズミ、師範 新井陽大(47[破]泉カミーノ教室)

撮影:上杉公志(エディスト編集部)


▼番記者梅澤コメント
 
イシス編集学校で学ぶ者にとって、もっとも気が引き締まるのは松岡校長を編集すること。泉カミーノ教室から生まれたもうひとりのエディスト記者・松林さんは、その最難関のお題に果敢に挑戦し、知性漂う重厚な創文へと結実させました。「感門之盟初日に音声が聞けなかったイズミ師範代のために」と松林さんが校長メッセージを要約した初稿を届ければ、イズミ師範代は、966夜『骰子一擲』を読み返して指南に応じる重厚な稽古ぶり。
じつは初日の校長メッセージは、当日に丸洋子師範代がJUSTしていたもの。既出の記事があることにプレッシャーを感じる松林さんに対し、イズミ師範代は「編集学校では一番は必要ありません。それぞれのダントツにに着目して輝かせてくれるのがイシス」「オリジナルなんて存在しません。模倣をどれだけ真剣にするかが大事」と渾身のエール。その追い風にのって、松林さんはどんどんとご自身の見方を打ち出し、感門翌日に参加したイシスフェスタ「情報の歴史を読む」での大澤真幸さんのレクチャーをリコールしながら、感門での自身の変化をリミックスしていきました。その成果にバニー新井師範は、「校長の言葉が端的かつ克明にきざまれてシビれる」と興奮。
 
タイトルに冠されているのは「世界読書奥義伝へ」の文字です。突破を祝ったこの感門から、松林さんは次なる[離]の門へのあいだをこのエディスト記事でつないでくださいました。この創文を書くのは「想像よりハードだった」と言いながらも、だからこその手応えを感じられたのでしょう。松林さんは、[離]への決意を固めたと宣言くださいました。臆することなく校長メッセージのremindし、representationできた松林さんなら、15[離]でも果敢に世界をアソシエイトしていくこと間違いありません。
  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。