遅れ馳せでも構わない。自分をおっかけ、世界をリメイク【47[破]突破目前】

2022/02/04(金)00:00
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「落語って自分で自分の落語をどのくらい追っかけられるかなんですよ」(立川談志、1793夜
「ユーミンであってユーミンじゃないユーミンをユーミンが演じていくようなものよ」(松任谷由実、1793夜

 

我々は追われなければならない。自分の背から逃げるように、走らねばならない。松岡正剛は、78歳の誕生日の晩、「おっかけ」という方法を自他に刻んだ。『世界制作の方法』のひとつである。

松岡は、20年以上かけて書きためた1800近い千夜を「千夜千冊エディション」として仕立てなおす。その松岡の肩越しに世界を見ようと、千夜坊主吉村堅樹と千冊小僧の穂積晴明が「おっかけ千夜千冊ファンクラブ」を組み、巨人の肩によじ登る。追いつ追われつ、知を紡ぐ。

「ぼくは芸術もそういうものでなきゃいけないと思っている。芸術家がみずから表現するということは、実は同時に自分に矢を向けているという行為なんです」

「みずからがそれを受けて、次の瞬間からはそれごと生き続けなきゃいけないんですよ」

(田中泯、『意身伝心』)

田中泯は33歳のころ、パリへ飛んだ。どうしても踊りを見てもらいたい人がいた。ロジェ・カイヨワだ。ワインの香りが充満する部屋で、踊る彼にカイヨワは言った。「一生、名付けようのない踊りを続けてほしい」。先達を追いかけ、76歳にして踊りつづける田中泯の姿は、いま全国の劇場スクリーンに映されている。その踊りの舞台には、盟友松岡正剛の主宰するブックサロンスペース「本楼」も選ばれた。東京豪徳寺の本棚劇場で、田中泯と松岡は踊りと語りをもって、ドストエフスキーを追っていた。

 

檄文としての千夜を受け取った、師範代清水幸江は言った。
「今まで『おつ千』面白いよ!とみなさんにお伝えしてきましたが、私は『おっかけ』という方法が数寄だったのだなぁと気づきました。今までずっとおっかけ、おっかけられていたのですね」
「ハイパーミュージアムをプランニング中の八客さん(学衆)も、校長や本楼、角川武蔵野ミュージアムをおっかけているだけでなく、これから入門する学衆さんにもおっかけられているのですよ、きっと」

 

多くの諸君はあまりにも「継続」から逃げようとしすぎているのではないですか。自分が自分のつまらないヴァージョンであることに嫌気がさしているのではないですか。それはねえ、まちがっているよ。

自分のヴァージョンとヴァージョンの隙間に「世界」を入れ込めることを看過しすぎているのです。

1793夜『世界制作の方法』

イシスの門をくぐった学衆にはひとつの共通点がある。現状を変えたい、ということだ。わたし1.0とわたし2.0のあいだに、世界をいれる。そのための方法として、38番のお題があり、4つの編集術がある。変革のチャンスを逃して、どうして春が迎えられようか。

 

「遅ればせながら、私儀、只今、やはり参上致しました」。これが大事なのである。準備ができれば、いつだっていい。そこに参上するべきなのだ。(松岡正剛、1207夜

 

卒門まで残り10日、突破期限まであと72時間を切った。遅れ遅れて、追って追われて。48[守]140名・47[破]80名の学衆は、区切りの門へ向かう。

 

写真:梅澤奈央

  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。