シーザーの「祭りの後」 タイガー・リリー教室

2019/10/05(土)14:27
img POSTedit

 ここで、メッセージの交換がされることはもう永久にない。


 2019年9月16日、43[守]の18教室に次々と鍵がかけられた。街道の提灯が一つひとつ消えていくような寂しさには、イシス編集学校のベテラン指導陣とてなかなか慣れないものだ。

 

タイガー・リリー教室師範代 福澤美穂子

 

 実はこの日、タイガー・リリー教室師範代の福澤美穂子はネットを離れていた。福澤が戻るころには、師範と師範代の楽屋ラウンジにも鍵がかかっている予定だ。代理で教室に施錠した師範の井ノ上裕二は、ラウンジで返事がもらえないことを見越しつつ、書簡をしたためるような心持ちで、タイ・バンコクから福澤にメッセージを書いた。

 

 「福澤師範代の言葉では”ひたひた”、わたし風では”じわじわ”と来る教室でしたね」。

 

[守]のお題でもあるオノマトペで、今期の教室の充実を讃える。楽屋でのコミュニケーションも、やはりイシス風だ。

 

 講座に区切りがついたこの時期は、「師範と師範代」というロールの関係が溶け出すときでもある。役目を果たしたエディストたちが「イシスの仲間」にほのぼのと還る。「コーチと受講者」という関係すら、いとも簡単に反転する編集学校にあって、祭りの後のエール交換は、新しい関係への楽しげな予感も孕んでいるのだ。

 

 43[守]の提灯が消えても、シーザーとタイガー・リリーの物語は、またどこかで続編が綴られることだろう。

 

  • 川野貴志

    編集的先達:多和田葉子。語って名人。綴って達人。場に交わって別格の職人。軽妙かつ絶妙な編集術で、全講座、プロジェクトから引っ張りだこの「イシスの至宝」。野望は「国語で編集」から「編集で国語」への大転換。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。